1話 躍動
夢を見た。夕焼けよりもなお金色に輝き、大空を飛ぶ龍の姿を。隣には幼馴染の雪がいて当たり前の下校時に、消して見る事の無い幻想的な光景が目に焼き付けられた。「雪あれ何だと思う?」そう雪に尋ねるも、返事はない。俺と同じように、あの景色に目を、心を奪われている。
そうなるほど、目の前の光景は美しく、非日常的だったのだ。龍は天高く舞い、やがて目当てのものを見つけたのか地上に降下してくる。まるでそれが、俺と雪かのようにその黄金の龍は目の前に降り立ち、言葉を発した。
「見つけました。私の子、私の後継、私の愛する者たちよ。身勝手なお願いだとは重々承知しておりますが、あなたたちには私とともに旅立ち、私の世界を救って欲しいのです。」
優しく厳かでとても透き通った声が頭に響いた。うまく内容を咀嚼できず、俺と雪はただそこに立ち尽くしてしまたのだ。
「何を…言って、世界を救う?訳が分からない…」
動揺で頭が回らない。この龍は一体俺たちに何を求めているだろう。しかし、まるで子供に言い聞かせるように優しく包み込むような声音で龍は語る。
「驚くのも無理はありません。しかしはすでに私には語ることなどなく、今この瞬間あなたたちに求めることは、ただ私と一緒に来てほしい、この一点です。それに…もう時間がありませんね。私には出会って間もない子供たちとしゃべることすらできない…悲しいですが、お別れです。天羽、雪、あなたたちに精一杯の祝福を。」
言い終わると、龍は羽ばたき大きな口を開け俺たちに向かってむかい飛んでくる。
「雪!」
とっさに体を動かし、いまだ微動だにしない雪を助けようとするが。結果はあがこうが変わらない。俺たちは二人そろって、龍の口に飲みこまれる。決して離すまいと強く抱きしめ抵抗するが、それも空しく俺の意識は刈り取られ、やがて微睡から覚醒へと移り変わる。