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家路
スーパーを出ると、再び真夏の熱気に包まれた。買ったばかりの食材が気になるが致し方ない。アップダウンの続く20分ほどの道のりを急いだ。
世界は今、大きな岐路に立たされていた。開かずの踏切を迂回するか直進するか。全てが私の決断にかかっている。ふとそのことを意識してしまい、押し潰されそうなプレッシャーが襲ってくる。
暑さでぼーっとしている間に私は踏切に向かっていた。踏切を渡ったところで太腿に鋭い痛みを感じ、空いていた左手で反射的にその辺りを払った。
「蜂?」
さっと見渡すが姿は見当たらず羽音も聞えない。服にとまったりもしていないようだった。
痛みは続いていたが歩けない程でもない。警戒しながらゆっくり坂を登った。
前方の坂の下では信号が無限に赤と青を繰り返している。その繰り返しを気が遠くなりそうになりながら眺めていると、悠久の時の流れに押し流されいつしか私は坂の下へと降りてきていた。
真昼の日差しを受けながら私は自宅へと向かう坂を登り始めた。坂の上には我が家があった。さり気なく、静かに、奥ゆかしくそこにあった。