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凶弾  作者: 透 明
2/4

スーパー

駅を背に、私はまずスーパーへと向かった。帰宅したあと再び駅近くのスーパーに買い物に出るのは酷く億劫だった。


真夏の太陽はジリジリと私の肌を焼き、それに呼応するかのように路上の蝉がジリジリと鳴いた。


突然路面が七色に輝いたかと思うと、涼やかな風が吹き抜けていき、私はいつの間にか仄暗い森の中に立っていた。不意に左腕に鈍い痛みを感じ、顔に前に上げて見ると、二の腕の甲に奇妙な紋様が鈍い光を発して浮かび上がっていた。

「これは?」

突然身の周りに起こった現象に戸惑っていると風切音をあげながら矢が向かってきた。

「うあぁ」

間一髪仰け反りながら矢をかわした私の意志と無関係に恐ろしい速さで左手が矢へと伸び飛び去ろうとする矢を掴んだ。そのまま左手は矢を飛んできた方へと投げ返し、ドサリという音とともに木の上から何かが落ちてきた。

状況についていけず、私は呆然と左手を見つめていた。

「お前、まさかミギー」

しかし、何も答えはなかった。

「お前、まさかヒダリー」

しかし、何も答えはなかった。

しばらく左手を眺めていると、矢とは反対の茂みからガサガサ音を立てながら見慣れない姿をした老人が現れた。老人の目もまた私と同様鈍い光を放つ私の左腕に釘付けとなった。

「その紋様は……」

老人の話では私の左腕に浮き上がった紋様を持つものは7つの龍玉と77のトレジャーを集め、47人の仲間とともに世界を救うという伝説があるという。こうして私は世界を救う旅を始めたのだった。


というようなことも特になく私はスーパーにたどり着いた。


「47人というと吉良邸討ち入りか、でも仲間が47人だからAKBかな」


そんなことをぼんやり考えながら自動ドアをくぐる。涼やかな風が吹き抜け、冷房の効いた店内へと入った。


ドサリという音に振り返ると、店員が商品の一角を崩していた。散らばった商品を拾うのを手伝うと週末の食材の物色を始める。


どれもこれも最近の物価高の影響で値上がりしていたが、霞を食べて生きていけるほど業を修めてもおらず、ため息をつきながら1kg250円のパスタを手に取る。先日までは200円しなかった品だ。


朝昼晩と食べるものは概ね決まっていたが、1年前に比べると3割ほども余分に支払わなければならなかった。給料は上がってすらいない。


買い物を終えると重い袋を手に店を出た。

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