決戦!回れ女子高生!の巻(10)
「ナーシャ、あなた一体何者ですの……?」
「私は"あちらの世界"からやってきた科学者さ。そして『ディフェクティブ・ファンタジー』はあちらの物理法則を元に、歴史、地理、自然……人間ひとりひとりに至るまで、世界を丸ごと再現したシミュレーターなんだよ」
ナーシャは椅子から立ち上がると、見たことのない神妙な顔つきで語り始めましたわ。
「私は子供の頃から常々、自分の住む世界はおかしいと感じていた。見えるはずのないものが見えたり、ありえないはずのことが起きたり。その違和感の正体を明らかにするために科学者になり、本格的に世界の仕組みを研究することでその疑念は確信に変わった。あちらの世界では、ある条件を満たすことで物理法則を無視した怪現象が起こるのだとね」
「それって……」
「そう、世界を設計した神様のミス。つまり……バグさ」
「バグが実在する世界……」
「その通り。私はバグだらけの世界を本来の姿に戻すべく研究を続けた。……その過程で見つけたんだ。バグの無い、正しい法則で動く並行世界を」
「それが、今ワタクシたちの住んでいるこちらの世界というわけですのね」
「ああ。そこで私はこちらの世界へ移住し、バグの無い世界とはいかなるものかを調べることにしたんだ」
「移住って……そんな簡単にできるものなんですの?」
「こと物質転送に関しては我々の世界の方が技術が進んでいるからね。ほら、一度行った街に瞬間移動する魔法なんかあるだろう? あれの応用さ。むしろ問題はそのために必要なエネルギーだった。同じ世界の中でなら少しの魔法力の消費で済むが、平行世界間の移動となると、人ひとり転送するにも莫大なエネルギーを必要とする。だから私だけでやってきたんだ。しかしこれは私ひとりで背負うにはあまりにも大きな仕事だ。そこで私はこの会社を興して『ディフェクティブ・ファンタジー』という名のシミュレーターを作り、ゲームのデバッグと称して人を集めて、我々の世界の異常を見つけてもらうことにしたんだ。それにはこちらの世界で暮らしている人間の方が適しているだろうしね。そして私は……キミを見つけた。世界に不要なバグを潰し、必要なバグとは共存する……そんなバランス感覚の持ち主をね」
そう言って、ナーシャは見覚えのあるエナジードリンクを取り出しましたわ。それはワタクシが死ぬ前に……いえ、あちらの世界に転送される前に彼女が差し入れたのと同じドリンクでしたわ。
「なるほどね。エナドリはエナドリでも、世界間移動のエネルギーが含まれていたというわけですわね。で、一度マスターアップまで完了させたワタクシをあちらの世界へ送り込み、現実世界でもデバッグをさせたというわけですのね。やっと合点がいきましたけれど……随分と好き勝手やってくれましたわね!」
「アハハ……それについては本当に申し訳なく思っているよ。だから、キミが飲んだドリンクには往復分のエネルギーを貯めておいたんだ」
「往復?」
「もしもキミが旅の途中でデバッグを諦めるようなことになったら……その時は自動的にこちらの世界へ戻ってくるようにしておいたんだ」
「…………つまり、デバッグを中断して今ここにいるのはワタクシ自身の意志、ということですのね」
「別に気に病む必要はないさ。もともと私たちの世界の問題にキミを巻き込んだだけなんだから。キミは今まで通り、こちらの世界で元の人生を歩んでくれれば……」
「ふんっ!」
話の腰を折ってナーシャからエナドリをふんだくりましたわ。
「こちら、いただきますわ」
「な、何を!?」
「たしかにワタクシ、一度は世界のデバッグを諦めましたわ。……けれど、それは過去のワタクシ」
「待つんだ、それにはまだ片道分のエネルギーしか貯まっていない! 飲んだら今度こそ帰ってこられないぞ!」
「フフッ。あいにく、あちらのマスターアップがまだなもので」
ワタクシはナーシャに微笑みかけ、腰に手を当ててエナドリを一気に飲み干しましたわ!
瞬間。
身体が。
意識が。
…………飛ぶ!
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