バグにはバグぶつけんだよ!の巻 (8)
「さて、いよいよ出発の朝ですわよ~!」
と言っても、もともと近隣の物見用に建設された町外れの塔をモンスターに奪われただけですから、ゾゾ邸から徒歩三分で到着ですわ。ちなみによくチラシに書かれている「駅まで徒歩三分」は全力疾走で五分のことですから皆様ご注意あそばせ。
「この塔、見た感じだいたい十階建てってところですか。高さはそこそこありますけど、そんなに恐ろしい雰囲気は感じませんね」
ラキスケにしてはいい分析ですわ。
「その通り。この辺りは序盤のエリアですから、本来はなんてことない難易度のダンジョンですわ」
「本来は、というと……?」
「言ったでしょう? この塔はバグだらけですのよ。ギルドの冒険者たちが攻略できずにいるのも間違いなくそのせいですわ。でもご安心なさって。きちんと対策は用意してありますから」
「ほんとかなぁ……」
古びたレンガ造りの塔は、各階中央に円形の大部屋があり、それらが螺旋状の階段で繋がっている造りですわ。
「おりゃっ!」
壁に蔦を這わせた食人植物をラキスケが鋼の剣で切り刻みつつ、進路を確保してくれていますわ。一応それなりに戦える兵士でしたのね。ちょっと見直しましたけど、昨夜の変態行為でプラマイゼロですわね。
「ええと、この大部屋が五階だから、ちょうど半分くらい昇ってきましたね、アン様。…………アン様?」
「……そうね。本当にそうならいいですわね」
「どういうことですか?」
「もう少し上がってみましょう」
※ ※ ※
「次でいよいよ十階……最上階ですよ!」
と、喜び勇んで階段を駆け上がっていくラキスケでしたけれど、そう簡単にことが運ぶなら苦労はありませんことよ。若いうちの苦労は買ってでもしろなんて言いますけれど、ほとんどの苦労は向こうから押し売りしてくるものですのよね。
「えっ……?」
階段の先にあったのは、他の階と見栄えの変わらない円形の大部屋と、さらに上階へと続く階段。
「どうして……最上階のはずなのに……」
「ラキスケ、これをご覧なさい」
ワタクシが指さした壁には、先程ラキスケが下の階で切り裂いた食人植物の死骸がへばりついていましたわ。
「これは……! アン様、一体どういうことですか!?」
「無限回廊ですわ」
「無限……なんですか?」
「正解の順路を通らないと、同じところを延々とループしてしまう罠ですわ」
「えっ!? それじゃあ今ボクたちがいるところは……」
「おそらく五階でしょうね」
「そんな……。あっ、でもアン様はその正解の順路を知ってるんですよね!」
「そんなの知りませんわ」
「この人ほんとわかんない」
「そもそも、ここまで大部屋と階段だけの一本道でしたでしょう? 順路もクソもラッキョもヘチマもございませんことよ。だいたい、無限回廊と氷のステージはゲーム後半と相場が決まっておりますわ」
「ということは?」
「単なる進行不能バグですわ!」
「一番やったらアカンやつ!!」
なんて嘆いていても始まりませんわよ!
「で、どうするんですか?」
「もちろん、このバグは想定済みですわ」
と、手のひらをペタリと階段の壁に押し付け、感触を確かめてまいりますわ。
「何してるんですか?」
「この無限回廊バグを起こすと、連動して別のバグが発生しますの」
いかがでしたか~~~~!
お気に召しましたら「ブックマーク」と「ポイント」で応援いただけたら、ワタクシとっても嬉しいですわ~~~~!
それから、よろしければ一言コメントで読者様がこれまでに体験した「おもしろバグ」をご報告くださいな!
もしランク上位に入って次回作を書く機会ができましたら参考にさせていただきますわ~~~~~!!
ところでワタクシ、先日ヨコハマの動くガンダムを見に行きましたの。
プラモデルを買おうと物販コーナーに参りましたら、置いてあるのみーんなガンダムですのよ!
ワタクシは……!
ワタクシはジオン派ですわ~~~~~~~!
……まぁガンダム買いましたけれど。
それでは皆様、また明日~~~~~~~~!!