決戦!回れ女子高生!の巻(3)
「……まぶし」
洞窟の外へ出た途端、不意の陽の光に思わず目を細めましたわ。空を見上げると、あれだけ渦巻いていた暗雲がすべて消し飛び、不気味なほどに青く晴れ渡っていましたわ。この世界の邪気と瘴気が集まる場所は、いまやここではないと言わんばかりに。
「見て! あそこ!」
アヤメが指さしたのは遥か南の空。ある一点に向かって、何本もの黒い稲光が落ちるのが見えましたわ。距離、方角……そして何より背筋に走った悪寒が、その場所……融合の祭壇に悪魔が降臨したことを告げていましたわ。
「急ぎますわよ! ポーゥ!」
「はいっ! ポーゥ!」
※ ※ ※
「……アン様。あの雲の動き、どう思います?」
ムーンウォークで並走するラキスケが、進行方向はるか先の上空に浮かぶ暗雲を指さしましたわ。融合の祭壇に黒い雷を落としたその雲は、徐々に西へと移動していましたわ。徐々にといっても、この遠距離から観測できるほどですから、実際にはかなりの速度でしょうね。
「きっとあの雲の下にヴォルがいますわ。なにしろ、ラスボスというのは暗いところにいると相場が決まっていますからね」
「出た、アン様の全然理屈は通ってないのになぜかよく当たる経験則。……今回も信用してますよ」
「ただのゲームあるあるですわよ」
「でも、これまで何度もそれに救われてきましたから。……それにしてもあの雲、一体どこまで移動するつもりなんでしょうね。あの先にあるのは……」
ラキスケの不安はすぐに的中しましたわ。それから半日ほど走ったところで、黒雲はある場所で動きを止めましたの。……ヴォルの故郷、タイプレイ王国。それは同時に、隣接するラキスケのウォンター王国の上空とも言えましたわ。
目に見える異変が現れ始めたのはその時からですわ。ウォンターとタイプレイの方角……その地平線から何かが空へ向かって伸びていくのが見えましたの。それは時間が経つにつれて高さと太さを増していきましたわ。ワタクシたちが、それが天を衝くほどの巨大な樹木であることを視認できたのは、その悪魔の植物に住処を追われた人々が作った集落にたどり着いた時でしたわ。幸い、ウォンターとタイプレイの国民は皆、無事にここへ逃げおおせたようで、途中ではぐれた兵士たちもどうにか自力で戻ったみたいですわね。ワタクシたちはタイプレイのビキニアーマー女兵士に呼ばれて、集落で一番大きなテントに案内されましたわ。
「アンよ、よく戻ってきた」
国民たちを連れてかろうじて逃げ延びていたクイン女王がワタクシたちの帰りを待っていましたわ。
「大変なことになったな」
……今のは女王が腰掛けている椅子ことヘンリーさんの発言ですわね。加えて、すっかり調教を終えたリトまで首輪をリードに繋げてはべらせてますわ。
「椅子が勝手に喋るな」
「はいっ!」
一喝すると、際どい角度で足を組み替えましたわ。その自信に満ちたセクシームーブ一発でショボい即席テントも黄金の宮殿に見えてくるからさすがですわね。
「ごめんなさい。まんまとしてやられましたわ」
「ふむ。相手の方が一枚上手だったようだな。だが、そんなものは蓋を開けてみるまでわからんことだ。これから取り返せばいい」
「……救われるお言葉ですわ」
「して、問題はあの"ヴォルの樹"をどうするかだ」
「やっぱり、あれはヴォルですのね?」
「ああ。奴は突然、黒い雷と共に我が城の中庭に現れ、手にしたモートの器を天に掲げたのだ。すると奴の足元から黒い木の根が広がり、瞬く間に首都全域……いや、地下を通ってウォンター王国にまで文字通り根付かせた。その根は斬ることも燃やすことも叶わず、近付く者たちの生気を吸い込み始めたのだ」
「たちが悪いですわね……」
「それだけではない。吸収した生気を使って樹を成長させ、頂きにヴォルを抱いたまま天へと幹を伸ばし、地上では枝々に咲いた花が実をつけ、実の中からは凶暴なモンスターたちが生まれた。こうなってはもう、我々は住み慣れた土地を捨てて逃げ出すよりほかなかった」
「………………」
「どうだ? 何か策はありそうか」
「……ええ。とても策と呼べるようなものではありませんけれど、ワタクシたちがやれることは一つしかありませんわ」
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