決戦!回れ女子高生!の巻(2)
「なっ……!」
横たわるヴォルに駆け寄り、混乱する頭を振り払って状態を確認しますわ。瞳孔は開き、脈も呼吸も無い。口から流れ出た血は既に黒く固まっている。この肌寒い洞窟の中で既に腐敗が始まっているところを見ると、おそらく死後数日は経過していますわね……。
「アン様、これは一体!?」
「……わかりませんわ。…………あら、これは?」
死体の左手に握られた小瓶。そこからこぼれ落ちる紫色の液体が、死体の口から血に混じって流れ出ているものと同じだと気が付きましたわ。
「毒薬ですわ……。わざわざワタクシたちをここまで誘っておいて自殺? 一体なんのために……?」
"それは正しくこういう時のためだよ、お嬢さん"
背後から聞き覚えのあるエコーがかった声。振り返ると、そこには死んだはずの男の遠隔投影された姿が宙に浮かんでいましたわ。
「……幽霊? それとも双子かしら?」
"ククク……! そのジョーク、内心の焦りを隠す仮面かな?"
「…………っ!」
"貴様らが道理を無視した技を使うことはわかっていた。だからこそ、ワザと呪いの洞窟にいるように見せかけ、北の果てという取り返しのつかない辺境へ誘導したのだ。おかげで予定通りモートの器との合成が完了できそうだよ"
言われてみれば、今やオンライン会議でもプライバシー保護のために背景を変えるなんてジョーシキ……! 完全にワタクシの見落としですわ……!
「それなら、今お前はどこか他の場所にいるということ? では、ここにある死体は偽物?」
リリィがワタクシに代わってヴォルを問い詰めますわ。が、ヴォルは余裕の笑みを浮かべて得意げに解説を続けましたわ。
"ククク、そこにあるのは間違いなく私の亡骸だよ。いやあ、自分で調合したとはいえ服毒死はなかなかに辛いものがあった。オススメはしないよ"
「なっ……! それじゃあ今のお前は……」
"君たちの想像通り、今の私は一度死に、死霊モンスターとして蘇った姿だ。人間どもが分類するところのね"
「そ、そんなことが……!」
「……できるのでしょうね。呪術というのは本来、超自然的なものですから」
"ククク、さすがお嬢さんは理解が早そうだ。……であれば、今から私のやろうとしていることも分かるな?"
「モートの器と……自分自身との合体」
"ハッハッハ、御名答だよお嬢さん! 人間のままではせっかくのモートの力を自分のものにできないのでねぇ! よし、正解したご褒美に、今度こそ本当に私のいる場所を教えてやろう。融合の祭壇だ。随分と田舎にあるのだが、わかるかな?"
「えっ!?」
アヤメが思わず声を上げましたわ。それはそうでしょうね。だってそこは……。
「うちの地元!?」
そう、融合の祭壇はゾゾ老人の町のすぐ近くにある観光名所。あぁ……今やっと繋がりましたわ。だってワタクシたち、あの町で食べましたもの。ふたつの生き物を合成した大して美味くもない名物、ドジョ・デ・ウナギを。そして、その旅の始まりの地はここからあまりにも遠い……!
"もはや貴様らがどれだけ急いだところで間に合わぬ! 最強の悪魔が生まれる歴史的瞬間を指を咥えて見ているがいい!"
勝ち誇った笑みをワタクシたちに向け、ヴォルの遠隔投影は消えましたわ。
「完全にしてやられた……。くそっ、もっと早くたどり着いていれば……!」
ラキスケが唇を噛みましたわ。
「いえ、今回はワタクシの思慮が浅かったのですわ。……ラキスケ、もしこのまま奴がモートの器と合体したら……誰も想定していない最悪の事態が起きる可能性がありますわ」
「それは一体……」
ワタクシは攻略ノートを開き、決して起こり得ないがゆえに黒く塗り潰したバグを睨みつけましたわ。
「おそらくヴォル自身も気づいていない……もしかするとこの世界そのものが消えて無くなる、最凶最悪のバグが発生するかもしれませんわ」
「なっ……!」
「……行きましょう。たとえ間に合わなくても、今やれることをやるしかありませんわ」
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