混浴温泉おかわり!タオル一枚、雪の山!の巻(6)
「キキッ!」
続けて二撃、三撃! 後退しながら紙一重で躱しますわ!
「ウキィ…………」
このままでは決定打に欠けると踏んだのか、猿は手刀攻撃を中断して大きく息を吸い込みましたわ。このモーションから繰り出される技は……!
「ウキャッ!」
開いた口から吹雪のブレスが吐き出されましたわ! こんな攻撃!
「もちろんお見通しですわ!」
すかさず身につけたバスタオルを外して前方へ放り投げると、ブレスを浴びたタオルが盾となって瞬間冷凍され、空中で一枚の板となってワタクシと猿の間を遮りましたわ! タオルはそのまま地面に突き刺さると、ゆっくりと傾いて倒れましたわ。
「ウキ!?」
さぞ驚いたでしょうね。だってタオルの向こうに居たのはワタクシではなく、準備万端、炎の魔法を構えたリリィだったのですから!
「喰らいなさいっ!」
彼女の両手から放たれた火球が猿に直撃し、その全身を炎に包み込みましたわ!
「ウキャーッ!」
猿は苦悶の悲鳴を上げながら雪の上を転がりましたけれど、まとわりついた炎は弱まるどころか一層強く燃え盛っていきますわ。
「さて、先ほどの話を続きをしましょうか。合成モンスターシステムに対して用意された攻略法……それは同じ弱点を持つモンスター同士でしか合成ができないという仕様ですわ。今回で言えば、動物も氷の精霊もどちらも炎に弱い。その二種が合体すれば当然、炎の効果も二倍になりますわ。そこを突けば、たとえどんな合成モンスターであろうとも対処は可能というわけですわね」
「ウ……キ……ィ……」
猿が雪の上で力尽きると、ようやく炎も消えましたわ。
※ ※ ※
「魂の抜けた死体……つまりアンデッドであるモートの器と、ヴォルがそこに入れようとしている呪いの洞窟に棲む悪霊。どちらも聖水が弱点ですわ」
スノウバスを出発したワタクシたちは、呪いの洞窟への道中、改めてヴォルを倒すための作戦を確認しておりますわ。
「なるほど、それであの村の温泉を使うわけですか」
フフ、ラキスケもようやく理解したようですわね。
「ええ。以前ダール火山でボスゴーレムを倒した作戦の応用ですわ。コネクトバッグにたっぷりと温泉の聖水を詰め込んできましたから、まだワタクシたちが到着しないだろうと油断しているヴォルに不意打ちで浴びせかけてやろうって寸法ですわ!」
「ちょっとずるいかも~」
「いいことアヤメ。デバッガーとは常に仕様の穴を突く仕事なのですのよ。そうやって世界を本来あるべき形に戻すのですわ」
「へー」
たぶんよくわかってませんわね。
「それにしても……まだ昼間だというのに随分と暗くなってきましたね」
ラキスケが暗雲立ち込める空を見上げて言いましたわ。
「私も……なんだか体が震えてきました。寒さとはまた違う感じ……」
リリィはそのあたり、人間よりも感覚が過敏なのかもしれませんわね。……いずれにせよ。
「敵の本拠地、呪いの洞窟はもうすぐということですわ」
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