混浴温泉おかわり!タオル一枚、雪の山!の巻(4)
「あら、別にいいじゃありませんの。どうせワタクシたちの他に誰もいませんし」
「それが問題なんですよっ!」
と指さした湯けむりの向こうに、隣の脱衣所から入湯した男の影がうっすらと浮かび上がり、直後、涼やかな風が吹いてその人影をあらわにしましたわ。
「ど、どうも……」
現れたラキスケが目を逸らして遠慮がちに手を振りましたわ。
「混浴だなんて聞いてないですっ!」
「あの……ボ、ボクあっちを向いてますんで……」
ラキスケが恥ずかしそうに背を向けましたわ。
「ほら、リリィ」
「うう……わ、わかりました……」
ワタクシに手を引かれて、ようやく全員が湯に浸かりましたわ。
「このお湯、なんかすごくリラックスできるね〜」
さすが肉体派のアヤメ。身体の変化には敏感ですわね。
「いや、それどころか体中の傷が癒えていく……。アン様、これは一体?」
ラキスケの背中に刻まれた数多の傷が、古いのも新しいのも関係なくみるみるうちに消えていきますわ。うーん、やっぱりサラピンの筋肉はいいですわね~。ツツツ、と……。
「ひあっ! ちょっ、アン様いきなり指で背中なぞらないでくださいよ!」
と思わずこちらを振り向いたラキスケと目が合いましたわね。
「……………………」
「……………………」
目が合うというか。
男のコの本能なのか、ワタクシの体のあちこちに視線が移動しておりますわね。
「……………………」
「……………………」
「……ちょっと長くありませんこと?」
「すっ! すみませんっ!」
ラキスケが慌ててまた背を向けましたわ。
「フフ、別に構いませんけど。お互い様ですし」
「そ、それはそれですみません……」
ワタクシの裸なんて何度も見てるでしょうに、いつまでも慣れないあたりがラキスケの可愛らしいところですわね。
「さて、みんなすっかり傷は癒えましたかしら? この温泉はウイント地方の地下水脈が源泉で、俗に聖水と呼ばれる類の性質を持っていますの」
「聖水というと……人間には回復効果を、死霊系のモンスターにはダメージを与えるアレですか」
ラキスケが背を向けたまま補足しましたわ。……あら、耳が真っ赤ですわね。
「ええ。ボス前に体力を回復しておくのは基本中の基本ですからね。もっとも、ここに立ち寄った理由はそれだけじゃありませんけれど」
「というと?」
「その前に、まずはヴォルの呪術について説明しておきますわ」
「呪術……。あの、生物を合体させるという」
さすがリリィ、よく覚えてますわね。
「さっき女将が話していた"変な生きもん"というのは、おそらくヴォルが合成実験に使った動物でしょうね。この術でモンスター同士を掛け合せて、さらに強いモンスターを生み出すというシステムですわ」
「システム……?」
アヤメが、ワタクシがあえて口にした違和感のある単語に反応しましたわ。
「呪術というオカルティックな名前がついていますけれど、その正体は、つまるところ『モンスター合成』という意図的に用意されたゲームシステム。となれば、あまりにも強いモンスターが生み出されて攻略不能に陥らないよう、キチンと弱点が用意されているのは当たり前ですわ」
「それじゃあ、ヴォルを倒す方法も……?」
「その通り。既にワタクシの頭の中では白鳥アントワネット大勝利! 希望の未来へレディ・ゴー!の絵が浮かんでおりますことよ!」
「さっすがアン! ……ところで話は変わるんだけど、この旅館、今あたしたち以外は誰も泊まってないんだよね?」
「と聞きましたけれど?」
「じゃあ、あれ誰?」
と、アヤメが脱衣所を指さしましたわ。そこには怪しくうごめく白い影……その手にしていたものは。
「なっ!? 私たちの服!?」
リリィが叫んだ時には既に遅し。白い影はワタクシたちの衣服をまとめて掴むと、脱衣所の出口へ向かって走り始めましたわ。
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