混浴温泉おかわり!タオル一枚、雪の山!の巻(2)
ラキスケがため息をつくのも詮無きこと。ここまでの旅路、砂漠を歩けば十年に一度の大砂嵐に遭うわ、洞窟に入ればランダム生成の落とし穴に落ちるわと不運の連続で、いつの間にか多くの兵士たちが散り散りになってしまいましたの。……いいえ、ワタクシの知識を持ってすれば、じっくりと時間をかけて乱数調整をすることで、もしかしたらこれらのアクシデントは回避できたかもしれませんわね。けれど今のワタクシたちにそんな時間の余裕はありませんわ。それに、この旅が予定通りに進まないなんてわかりきっていたことですわ。
「さあ、この山を超えればいよいよ呪いの洞窟のある北の大地ですわ! みんな、もうひと踏ん張りですわよ!」
そう仲間たちと自分自身を鼓舞し、再び行軍を再開しましたわ。……が、こういう時に限って不運は続くもの。山頂を越え、下り始めたところで空を暗雲が覆い、雪はたちまち吹雪へと変わってワタクシたちの視界を塞ぎましたわ。
「み、みなさんっ! ちゃんとついてきてますのっ!? 今ワタクシにしがみついているのは誰っ!?」
「あたし! アヤメっ!」
「そ、その後ろはリリィですっ!」
「し、しんがりはボクですっ! ラキスケですっ!」
「はあっ!? じゃあ今ヘンなとこ掴んでるのあなたなんですか!? 離してくださいすぐにっ!」
「なっ! 視界真っ白でなにも見えてないんですよ! 手を離した瞬間にはぐれちゃいますよ!」
猛吹雪の中、かろうじてラキスケの声までは聞こえますわね。……っていうか。
「ラキスケ! 今アナタしんがりって言いました!?」
「は、はいっ! ボクの後ろには誰もいませんっ! ……あっ! アン様、そこにうっすら見えてるの、横穴じゃないですかぁ!」
「どこですの!」
「ほら! 前方、ちょっと左の方、見えますかあっ!」
吹きすさぶ白い暴風の中、言われた方向に薄目を向けると、たしかにそれらしい洞穴がかすかに見えましたわ。
「い、いったんあそこに避難しましょう!」
※ ※ ※
「……とうとう、ボクたちだけになってしまいましたね」
枯れ木と予備の衣服をリリィの炎の魔法で燃やして作った焚き火を囲みながらラキスケがぼやきましたわ。すると、リリィが追加の枯れ木を火にくべながら。
「自然だけはどうにもできませんから、せめて吹雪が止むまで眠って体力を回復した方がいいですよ。……あの子みたいに」
と、すやすやと子供のような寝息を立てているアヤメを指差し、自身も「おやすみなさい」と横になって目を瞑りましたわ。
「そうですね……」
それから一時間後……いいえ、こんな状況で時間を長く感じていたでしょうから、おそらく三十分くらい経った頃かしらね。たき火の向こうで寝ていたラキスケが身を起こす音が聞こえましたわ。アヤメとリリィは……眠ったままのようですわね。
「…………アン様、まだ起きてますか?」
「……なにかしら?」
「アン様は……ヴォルのことを最後の敵だと仰ってましたよね」
「そうね」
「最後の敵を倒すと……どうなるんですか?」
「それはもちろんエンディング……と、ゲームならそう答えるのが正解なのでしょうね。でも……正直言って、ワタクシにはわかりませんわ」
その答えにラキスケは目を丸くしましたわ。
「アン様にもわからないことがあるんですか?」
「フフッ、そうよ。……ワタクシ、気付いたときにはこの世界に存在していて、それがたまたま以前デバッグしていたゲームとそっくりな世界だったから、その知識を活かして冒険しているだけですわ。だから、異世界転生が起こったなんて本当は今でも信じきれていませんの。もしかしたら、これは昏睡状態のワタクシがベッドの上で見ている夢なんじゃないかしら……時々そんなことも考えますわ」
……フフ、ワタクシったら、どうしたのかしらね。最後の戦いを前にちょっとおセンチになってしまいましたわ。
「夢なんかじゃありません!!」
「……ラキスケ?」
「だってボクは……少なくともボクはここに確かに存在していますから! って言ってもアン様には伝わらないんですけど……。でも! とにかくボクはここにいるんです!」
「ラキスケ……」
彼の瞳がたき火に照らされて赤く燃えていましたわ。
「そうね。アナタのいうこと、信じてみますわ。……だから、今は寝ましょう」
「はい。……アン様、おやすみなさい」
いかがでしたか~~~~!
お気に召しましたら「ブックマーク」と「ポイント」で応援いただけたら、ワタクシとっても嬉しいですわ~~~~!
それから、よろしければ一言コメントで読者様がこれまでに体験した「おもしろバグ」をご報告くださいな!
もしランク上位に入って次回作を書く機会ができましたら参考にさせていただきますわ~~~~~!!




