混浴温泉おかわり!タオル一枚、雪の山!の巻(1)
「ポーゥ! はい続けて!」
「ポーゥ!」
「ポーゥ!」
ここはウォンター城の中庭。ワタクシの号令に合わせて、ウォンター王国とタイプレイ王国から選りすぐられた兵士たちおよそ二百人がムーンウォークの練習に勤しんでいますわ。なんともシュールな光景ですわね。けれど、ムーンウォーク快走バグこそがヴォルの想定に無い北の果てへの最速ムーブである以上、彼らにもこの技を身に付けてもらわなければいけませんのよ。
「前の足の踵を上げて、後ろ足を……? む、難しい……」
「皆さん、よくこんな複雑な動きができますね。さすがは救国の英雄だ……!」
うーん……上手く歩けているのは、見たところざっと一割弱というところですわね。
「あの、アン様……」
隣で練習を見学していたラキスケが不安そうに耳打ちしてきましたわ。
「ムーンウォークって、そんなに難しいですかね……?」
「はぁ……ラキスケ、そういう『できる側の視点』はよくないですわよ。人には得手不得手というものがあるのですから」
「そ、それはそうなんですけど……なにしろボクたち、みんな難なくこなしてしまっていたので、そんなに難しい技術だなんて思ってなかったんですよ」
「……いいこと、ラキスケ。ムーンウォークというものは、人生を有意義に生きる上でまーーーったく必要のない動きですの。よく考えてご覧なさい? 前に進んでいるように見せつつ後退する。これに一体なんの意味がありますの? できたからと言って、何か得することがありまして?」
「い、いいえ……」
「とどのつまり、ムーンウォークは総じてヒマ人でなければ会得し得ない技であり、貧乏暇なしという言葉に表されるように、ヒマを持て余した上流階級のための高等技術なのですわ!」
「は、はあ……」
問題は、日中ずーっとムーンウォークで走り続けたとしても、呪いの洞窟がある北の果てまでは二日以上かかる超・長距離マラソンになるということですわ。その過酷な道程に耐えられる兵士が、果たしてこの中からどれだけ出てくるものでしょうね……。
「さて、三時間後には出発ですわよ。ラキスケも今のうちに必要なものを調達してコネクトバッグに詰め込んておきなさいね」
「は、はい!」
※ ※ ※
「それでは、行ってまいります!」
見事ムーンウォークを習得した兵士たちを代表し、声のでっかいタイプレイ王国の女兵士長がクイン女王に向かって敬礼をしましたわ。
「うむ。……アンよ、我らが兵を貴様に預ける。誰もが選びぬかれた精鋭たちだが、なにしろ相手は禁断の呪術のエキスパートだ。くれぐれも油断せぬようにな」
「わかっておりますわ。……とはいえ、ヴォルの奴もまさかバグを使って高速移動してくるとは夢にも思っていないはず。モートの器に魂を入れる前に先手を打って一泡吹かせてやりますわ! それでは、いざ出発ですわ~!」
ワタクシの合図でラキスケ、アヤメ、リリィ……そして兵士十五名が一斉に進行方向に背中を向けましたわ。
「いざ、出発!」
右手を天に掲げ、左手を股間に添えまして、あとは軽く内股気味に膝を曲げ……そして!
「ポーゥ!!」
縦一列に並んだジャクソン軍団が、まるでリニアモーターカーの如き加速力で二国を囲う城壁を飛び出しましたわ! もうもうと砂煙を上げながら突き進み、あっという間に街が見えなくなりましたわ!
「アン様! これ、いつも以上に速度が出てませんか!? ポーゥ!」
ラキスケが耳元を駆け抜ける風の音に負けじと大声で尋ねてきましたわ。
「フフッ! お気付きになりまして? これは先頭が風よけになることで列全体のスピードを上げつつ、後続は体力を温存できるという自転車レースにおける定石陣形ですわ! ポポーゥ!」
「なるほど! しかし、このペースなら今日だけで行程の七割は達成できそうですが……たしか到着予定はもっと遅かったはずでは? ポポポーゥ!」
「ええ! 少し遠回りになりますけれど、寄りたい場所がありますの! ポポポポーゥ!」
「ポーゥ!」
「ポーゥ!」
「ポポポーゥ!!」
カエルの輪唱のようにポゥポゥ叫びながら後ろ向きに突き進む我らクレイジートレイン、ダイヤ通りに運行中ですわ~!
※ ※ ※
「随分と数が減りましたわね……」
夕刻、北の大地との境界にそびえるウイント山。現在、雪の降り積もった登山道の中腹で、疲弊した兵士たちに休息をとらせていますわ。
「残った者は全部で七名ですか。既に半数以上が脱落しましたね……」
いかがでしたか~~~~!
お気に召しましたら「ブックマーク」と「ポイント」で応援いただけたら、ワタクシとっても嬉しいですわ~~~~!
それから、よろしければ一言コメントで読者様がこれまでに体験した「おもしろバグ」をご報告くださいな!
もしランク上位に入って次回作を書く機会ができましたら参考にさせていただきますわ~~~~~!!




