バグにはバグぶつけんだよ!の巻 (7)
「どうぞ中へ。ここは我がゾゾ家の別宅で、今は誰も住んでおりませぬゆえご遠慮なく」
街の中心にあるゾゾ老人の邸宅へ案内されましたわ。そこそこ大きなお屋敷ですわね。まぁ、ワタクシから見ればシルバニアンハウスですけれど。
「はぁ~、広いお宅ですねえ。……あっ! ということは、さらわれた孫娘というのもかなりのお嬢様……!」
「ラキスケ、口から性癖がダダ漏れですわよ」
「そっ、そんなことありますよ!」
屋敷は二階建てで、一階には居間と主人の寝室、浴室とお台所、二階には客室がいくつかあるようですわ。
「客室はほとんど倉庫代わりにしてしまっておりますが、奥の角部屋が空いております。相部屋で申し訳ありませんがお使いくだされ」
「ありがとう。むしろラキスケはその方が喜びますわ」
「そっ、そんなことありますよ!」
ワタクシ、正直者は嫌いでなくてよ。
「うわー! この部屋、内装も豪華ですねー」
ラキスケはなんだか感動しているみたいですけれど。
「……そうかしらね?」
部屋の壁にはベタな鹿の頭の剥製。不相応にでかすぎるシャンデリア。無駄に派手な花瓶に入ったお花。絵に描いたような成金趣味ですわ。お金の使い方に慣れていらっしゃらない方が、何をどこに配置していいかわからずに「う~ん、いっちゃんええやつ!」って注文するとこうなりがちなのですわよね~。
「つまり、お嬢様はお嬢様を知る! ですわ!」
「なんですか急に」
「ワタクシの観察眼によれば、このゾゾ家……恐らく歴史ある名家ではなく、あの老人の代でいきなり財を築いた成金ですわ。ゆえに、助けに行く孫娘にあまり純粋な『お嬢様』を期待しない方がいいですわよ」
「ハハッ! ボクのお嬢様守備範囲は広いのでご心配なく!」
「心配する要素が見当たりませんわね」
「……ところでアン様、その鞄からはみ出てる汚い布、一体なんですか?」
「三日前に履いてた靴下ですわ」
ラキスケが鬼の形相に変わりましたわ。
「はあ!? どうして洗濯しないんですか!」
「だってワタクシ、家事なんてやったことないんですもの。お嬢様ですから」
「じゃあ鞄の中に入れっぱなしにしとけば勝手に靴下がキレイになるとでも!?」
「えっ? そうね。もしかしたら、なるかも……」
「なるわけないでしょうが! 三日前のくっさいくっさい靴下を履いてる女性がお嬢様だと言えますか!?」
「い、いえなくもなくもなくもないかも……」
「ちょっとその鞄見せてください!」
「あっ、お待ちになって……!」
そりゃあ確かにワタクシ多少、わずかに、もしかしたズボラなところがあるかもしれませんけれど、勝手に人の鞄をふんだくるのはよくありませんわ~!
「いいえ待ちません! アン様がお嬢様でないと僕が困るんです! ……うわっ、ティッシュが中で散らばってる! 底にバラバラ小銭が落ちてる! ゲエッ、こっちには袋に入った食べかけの……」
「も、もういいでしょう! 勝手にワタクシの私物を漁らないでくださいまし!」
「いいえダメです! これからは定期的にボクが荷物のチェックをします! これはアン様にお嬢様でいていただくために必要なことです!」
「うぅ……」
不覚……この男のお嬢様に対する無駄に強いこだわりを甘く見ておりましたわ……。
「ほら! 荷物はボクが整理しておきますから、アン様はさっさとお風呂で身体を綺麗にしてきてください! ベッドメイクはこっちでやっておききます!」
「わ、わかりましたわよ……」
まったくもって他人のフェチは理解しがたいですこと~!
「失礼いたします」
部屋に入ってきたのは、荷台を運んできたお屋敷のメイドさんですわ。
「こちら、本日のお夕食になります。ごゆっくりお楽しみください」
テーブルの上に並べられた料理。そのメインディッシュは……えーと、なにかしらこれ? ドジョウ? それともウナギ?
「わっ、アン様見てくださいよこれ! 高級品のドジョ・デ・ウナギのかば焼きですよ! 珍しいなあ!」
「なんですのそれ……とりあえず、いただきますわ」
お箸でひとつまみ口に運びますと……うーん、微妙な味ですわね……。
「アン様、いかがですか?」
「ウナギの値段とドジョウの淡白さ、両方の性質を併せ持つ♡」
「えぇ~? せっかく融合の祭壇でドジョウとウナギを三日かけて合体させた料理なのに~」
「いや別々に食べなさいよ!!」
……まぁ、とにかく精だけはつきましたから、明日はがんばりますわよ!
いかがでしたか~~~~!
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それから、よろしければ一言コメントで読者様がこれまでに体験した「おもしろバグ」をご報告くださいな!
もしランク上位に入って次回作を書く機会ができましたら参考にさせていただきますわ~~~~~!!