ここはどこ?私はお嬢様?風雲ノース城!の巻(13)
「なんだ、この城は……?」
森を抜けるとまた草原が広がった。その中心に鎮座する目的地、ノース城。だが、近づいてみてそれが単なるハリボテであることがわかったのだ。
「よう、オイラの城までたどり着くなんて、なかなかやるじゃないの」
地の底からしゃがれた男の声が響いた。直後、大地が揺れ、土が盛り上がり、土砂の中から巨大な鉄の塊が姿を現した。……以前、アン様に「戦車」という兵器があると聞いたことがある。砲塔の代わりに左右の側面から二本のアームが伸びているが、キャタピラーと呼ばれる履帯を履いている以上、恐らくこいつも戦車の一種なのだろう。
「……アン様、危険です。下がっていてください」
アイスソードを固く握る。……魔力を封じられたこの剣で果たしてどこまで立ち向かえるだろうか。いや、立ち向かい……そして勝たねばならない。
「ほう、やる気だね。なら行くぜニイチャン」
戦車の中からまだ見ぬ城主の声が響くと、ギュルギュルと不快な音を立ててキャタピラーが回転した。……思ったよりも速い!
「くっ!」
間一髪で飛び退く。あんな鉄塊の下敷きになったらおしまいだ。しかし、懐に飛び込んでこそ得られるチャンスもある。あれだけの巨体である以上、あのキャタピラーでは小回りはきかないはず。つまりこのゼロ距離、側面からの剣撃は防ぎようがない!
「うおおおおっ!」
振り下ろしたアイスソードが履帯を切り裂く! ……はずだった。
「ぐっ!」
ガキンと鈍い金属音を立て、剣は高速回転するキャタピラーに弾かれた。いかにアイスソードとはいえ、やはり魔力が宿らなければただの鉄か……!
「!?」
不意に頭上を覆った影に反射的に剣を振るった。それがまずかった。影は側面から伸びてきたアームだった。それに刀身を掴まれ、動きを封じられた。剣を取り戻そうと地面を踏みしめ、柄を握る手に力を込める。冷静になれば機械と力比べをして勝てるはずがないのだが、命のやり取りの最中にそんな余裕はなかった。アームは剣を掴んだボクごと前方へと振り回し、反対側から伸びてきたもう一本のアームがボクの腹部を掴み、捕えた。
「ぐあっ……!」
アームが絞られ、鎧の上から身体が圧迫される。締め付けられ、声にならない声を上げた。
「ラキスケ様!」
ああ……アン様を後方に待機させておいてよかった。少なくとも彼女はまだ助かる……。
「アン様……逃げて……」
「ラ、ラキスケ様を離しなさいっ! 次はワ、ワタクシが相手ですっ!」
「なっ……何を言ってるんですかアン様っ……! はやく逃げ…………ぐあっ!」
締め付けが強くなる。無理だ。こんな化物を相手にあのお嬢様が戦えるはずがない。現に、あんなに足が震えているじゃないか……。
「ワッ、ワタクシでは……あなたに勝てないかもしれませんっ……! でも、でもラキスケ様と一緒に死ねるなら本望ですっ!」
な、何を……!
「へえ、ネエチャン最近の若いのには珍しく殊勝だねェ」
殊勝……?
「ラキスケ様ひとりでは逝かせませんっ!」
違う……。
「いいぜ。なら、このキャタピラーで踏み潰した後、すぐにコイツも握りつぶしてやるよ!」
「来なさいっ!」
違う……。
違う……!
「違うでしょうアン様ッ!」
「えっ!?」
「アン様がっ! あのアン様がすべての手段を尽くす前に諦めるはずがないでしょう!」
「そ、そんなこと仰っても……」
「アン様は! アン様はこんな鉄の箱に引きこもった便秘中のクソみたいな奴に負けるはずがないんですよ!」
「なっ……ラキスケ様なんてお下品な……!」
「下品なことなんて言わない!? そんなお嬢様の常識なんて通用しないのがアン様じゃないんですか!!」
「ラ、ラキスケ様……?」
「アン様はっ……世界からバグを無くすためならなんだってやるっ……! 己の人生の目的を達するためなら何も迷わない……! その真っ直ぐな生き方が…………真っ直ぐに生きるアン様が…………」
「ラ、ラキスケ……」
「ボクはっ! 好きなんですっ!!!」
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