バグにはバグぶつけんだよ!の巻 (5)
「で、今はどこへ向かってるんですか?」
「あそこに見える塔ですわ。初めてのダンジョンでプログラマーも勝手がわからなかったのか、かなり終わっとるバグの温床になっておりますの」
ワタクシが南の方角を指差すと、ラキスケは目を細めて遠方にうっすらと見える目的地をなんとか視認しましたわ。
「……かなり遠いなぁ。このまま徒歩で向かうなら到着は明日になりそうですね」
「は? 何おっしゃってますの? 善は急げノロマは罪人、罪人は網走刑務所に収監ですわよ? あんなの今日中に到着いたしますわ」
「いやいや……人の足じゃどうやったって」
「はぁ~まったく脳みそ3グラムでいらっしゃいますわね~! 先程も言ったでしょう? この世界はバグに満ち満ちておりますのよ!」
そう言ってワタクシは右手を天に掲げ、左手を股間に添えまして、あとは軽く内股気味に膝を曲げて完成ですわ。
「ポーゥ!」
「……………………」
「……何ボサッと見てるんですの。ほら、アナタもサッサとやりなさいな!」
「えぇ~……嫌ですよ。アホ丸出しじゃないですか」
「丸出してませんわ! チラ! チラですわ!」
「チラでも嫌ですよ、にんげんだもの」
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、つべこべぬかしてめんどくせえーですわね~!
「黙ってこれをご覧なさいな!」
その場で華麗に180度ターンを決めたワタクシが、進行方向に背を向けたまま片足を後方にスライドいたしますと……なんということでしょう! 一瞬にして10メートルもの距離を移動してしまったではございませんこと!
「名付けてムーンウォーク快走バグですわ!」
「はやっ! キモっ!」
「前半の賛辞だけ受け取っておきますわ」
「いや、それどういう仕組みなんですか? 明らかに物理法則のレギュレーション違反でしょ」
「原理を説明すると長くなるのですけれど、簡単に言うとオフザケで入れたモーションをプログラマーがデバッグ用のダッシュ操作に紐づけたまま削除するのを忘れてたクソみてーな人災バグ」
「バカのせいなのはわかりました」
「では行きますわよ」
「ハァ……わかりましたよ。猛スピードで置き去りにされても困りますし。えーと、右手を天に、左手を股間に添えて、ちょっと膝を曲げて」
「ポーゥ!」
「ポーゥ!」
はい!
ギュンですわ!
速いですわ~! ムーンウォークするたびにギュンギュン景色が後ろ向きに流れていきますわ~! 見た目は変態ですけれど、さすがデバッグモードですわね~! 今日中どころか一時間後には到着ですわ~! 見た目は変態ですけれど~! ポーゥ!
「……あの、アン様すみません」
「見てくれが変態な件についてのクレームは受け付けておりませんわ~! ポーゥ!」
「いや、そうじゃなくて……なんかボクだけスピード落ちてる気がするんですけど」
確かに少しずつラキスケが後方に遠ざかっていきますわね。ポーゥ! まぁ当然ですわね。ポーゥ!
「アナタ、定期的にポーゥ!やらないと速度保てませんわよ」
「その変態しぐさは聞いてない」
「一度ポーゥ!するも二度ポーゥ!するも同じことでしてよ! ポーゥ!」
「きっつ。ポーゥ!」
というわけでポーゥ!あっという間に塔のふもとにある街に到ーゥ着しましたわポーゥ!
「ところでアン様、このスピードで街の中へ突っ込んだら大惨事なんですが。これどうやって止めるんです?」
「バグにそんな高級な機能はございませんわ~! ワタクシたちはブレーキの壊れたダンプカーでしてよ~! 自然に速度が落ちるまで街の外周をマラソンいたしますわ~!」
「なんなん」
というわけで、ワタクシたちは街の周りをしばしグルグルと回っておりますわ~! 目的地まであと1マスのところで6出してしまった桃鉄の如しですわ~!
いかがでしたか~~~~!
お気に召しましたら「ブックマーク」と「ポイント」で応援いただけたら、ワタクシとっても嬉しいですわ~~~~!
それから、よろしければ一言コメントで読者様がこれまでに体験した「おもしろバグ」をご報告くださいな!
もしランク上位に入って次回作を書く機会ができましたら参考にさせていただきますわ~~~~~!!