ショートカット登山!天然混浴温泉バトル!の巻(4)
「おじゃまします……って、誰もいないですね」
その割に昨日まで誰かが住んでいたかのような生活感に満ちていますわね。家というものは住人がいなくなると驚くほど早く朽ちてゆくものですけれど、きっとこの家は呪術師の遺した魔力で守られていますのね。
「なんか難しい本がいっぱいあるね」
アヤメが本棚から何冊か手にとっては、表紙だけ見て戻すのを繰り返していますわ。ざっと見たところ、ほとんどがゴーレムの製造方法について書かれたものですわね。初心者向けから上級者向けまで幅広く取り揃えてありますわ。どうやら生粋の呪術師というわけではなく、ここで一から勉強してらしたみたい。そりゃ失敗作も大量に生まれるはずですわ。
「このバッグ……なんか中からいい匂いがする」
本棚に見切りをつけたアヤメが、続いてテーブルの上に放置されていたリュックタイプのバッグをクンクンと嗅いでますわね。……あら、これは。
「コネクトバッグとはレア物ですわね」
「なにそれ?」
「中が謎の収納空間に繋がっていて幾らでも物を収納できるという、明らかにオーバーテクノロジーのくせに色んなゲームに気軽に出てくるバッグですわ。せっかくだから使わせていただきましょう」
……なんかラキスケが眉をしかめていますわね。
「勝手に使っていいのかなぁ……」
「人ん家のタンスからアイテムを取ったことのない勇者だけが石をお投げなさい」
大体、一番恩恵を受けるのはクッソ重い装備を持ち運んでるアナタなんですわよ。
「っていうか、そんな得体のしれないところに物を入れて大丈夫なんですか?」
「ちゃんと取り出すものをイメージできていれば問題ありませんわ。もっとも、慌てたらヤカンとか長靴とか出てくるかもしれませんけどね」
「あーっ!」
物色に飽きたアヤメが奥の戸を開けてなんか叫んでますわね。
「奥に温泉あるよ、温泉!」
「ええ。呪術師が地熱を利用して作った露天風呂ですわ。だからここで休憩することにしたんですわよ」
「やった! 入ろ入ろ~」
「え~! ボクも入りたいです! さすがにもう汗だくで……。じゃあ、どっちが先に入ります?」
「え? 順番あるの?」
「そりゃそうですよ」
「じゃ、ラキスケが先でいいよ」
「えっ、いいんですか? では遠慮なく……」
戸を閉めてラキスケが湯気の向こうに消えていくと、すぐにアヤメがその場でワンピースの水着を脱ぎ捨てましたわ。
「もういいよね? じゃ、あたし後から入りま~す」
……たしかに「入る順番の話」はしましたけど、湯から上がってくるまで待つとは言ってませんでしたわね。
"ギャーッ! 何入ってきてんですか!"
"だって、はやく汗落としたいから"
"ちょっ! 前! 少しは隠してくださいよ!"
"タオル持ってきてないもん"
"もぉ~っ! お嬢様というのはもっと羞恥心をですねぇ…………"
ふたりが湯気の中でエコー効かせて騒いでる間に、ワタクシは本棚から一冊の本を取り出して読書に耽りますわ。さっきアヤメが物色していた時に見つけた、やけにボロっちいその本。ここに住んでいた呪術師の日記帳ですわ。
「…………………………………………」
そこには、かすれた字で彼の苦悩の日々が綴られていましたわ。
「……………………へえ、そういうわけでしたの」
しばらくすると、すっきり笑顔のアヤメと、すっかり疲弊した表情のラキスケが顔面コントラスト全開で湯から上がってきましたわ。
「あ~気持ちよかったぁ。すっごくいい眺めの露天風呂だったよ。アンも入ってきたら?」
「ええ。これから一人でゆっくり浸からせていただきますわ」
「そうしてください……」
ラキスケも一緒に入ってもいいんですわよ~っておちょくろうと思いましたけど、どうやらラキスケ一人だけ湯あたり気味のようですから、そっとしといてあげますわ。
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