ツイート
「今日は配信ないんですか?」
『今、友達のとこから帰宅中なんですが』
「じゃあ、正座待機」
「二十二時まで待ちます」
『いや……ちょっと道に迷いまして』
「どこですか?」
『いや、身バレまずいでしょ……友達のアパートから階段を降りて』
「階段降りたら即迷子」
『なんか見知らぬ街だ……』
「戻ったら?」
「人に聞こう」
「Googleマップがあるじゃないか」
『いや、Googleマップが開かない』
「電波悪いん?」
『悪かったらTwitterも開かんわな』
「ですなー」
「Googleマップはどんな感じですか? 参考までに」
『えっとね。ほら読み込みのときにぐるぐるまわるやつあるじゃん? あれが周りっぱなし』
「GPSが死んじゃったとか?」
「人に聞いてみよう!」
『それが、どこにも人影が』
「どんだけ田舎」
「いや、戻ればいいじゃん」
『ない』
「は?」
『身バレ覚悟でいうけど、アパートっていうかね。市営住宅団地なんよ。五階建ての』
「じゃあ、遠くまでみえるじゃん」
『ないんよ』
「は?」
「どうして?」
『わかんない。私が知りたい』
「ちなみに自宅までどのくらい?」
『徒歩五分』
「え? どのくらい歩いてるん?」
『十分くらい? なんか街灯が点々としててね。人がいる気配がないの。でね、家にも灯りがない』
「警察に電話だ」
しばらくツイートなし。
「なんとかなりましたかー?」
「これはYouTubeに移動かな」
『繋がらない』
「マジか!」
「すみません。なにか目印になるものありませんか」
『探してます。でもなんだか空気が悪いのか気持ち悪くて』
「座れるとこあったら座った方が」
「とにかく深呼吸して」
『いや、明かりがありました。コンビニっぽい』
「よかった!」
「今日の配信は無理しなくていですよー」
「まぁ体調も悪いみたいだし」
『ウケる』
「は?」
「どうしましたか?」
「ドッキリだった?」
『セブンなんだけど、読めない』
「は?」
「看板が?」
「セーブオンとか?」
『ううん。読めないんよ。写真送ります』
真っ暗な写真。
『でしょ?』
「え?」
「は?」
「真っ暗ですよ」
『え? なんか読めない文字ていうか、デザインというか。セブンイレブンなんだろうけど読めない感じで』
真っ暗写真。
「同じですよー」
「まぁ、コンビニで道を聞けばあとはなんとか……」
『ヤバい!』
「早くコンビニに……」
『あれ、人じゃない みられた』
「は? 大丈夫ですか?」
「どうしたんだろ?」
「みられたって」
「家に着いたらツイートしてくださいね」
「YouTubeもまだ配信なし」
数日後。
『おさがわせしました。近所で迷子になっていただけでした』
「おかえり!」
「おかえりなさい!」
「大丈夫でしたかー」
「よかった、よかった」
「YouTube再開楽しみにしています!」
YouTube更新なし。アカウント削除。
Twitter更新なし。アカウント削除。