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△▽の怪異  作者: Mr.Y
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三柱の三神主への取材

 三柱の三神主といっても実際に神社をもっているわけではない。各地を放浪し、依頼をよせた個人に神事を執り行う形態で怪奇現象や霊的なものを祓い、普通の神社で執り行う神事さえをもする。その依頼というのもネットを介したものがほとんどというから現代ならではの歩き巫女のようだとも思えた。近年、SNSなどで噂されている彼らの正体に我々、MU編集部が迫る!


(神社の出張サービス的なユーモアもいれるべきか? それともユーモアを完全に取り除いて真に迫るものにすべきか? 以下、音声字起こし)


「それではインタビューをさせていただきます。こんばんは、MU編集部の飯島といいます」

 取材はホテルの一室で行われた。

 三人の神主を名乗る男女がおり、向かって右に中年女性、真ん中に老婆、左に眼鏡をかけた二十代くらいの男性という構成になっている。着ているものはスーツで老婆だけはタートルネックにゆったりとしたスラックスだ。霊能者特有の御守りだとかアクセサリーの類はまるっきり身につけてはいない。そのせいか神主を名乗るわりには神秘性がなく、どこにでもいる一般人のようだ。三人とも正座でこのインタビューの最中、足を崩すことは無かった。

「はい。正直、我々はインタビュー的な依頼は受けるつもりはありませんでしたが、最近、我々に対する質問のメッセージをたくさん頂いておりまして、それらに逐一返答するのも些か煩わしく思っているのです。そこでこういった取材を受けることで我々を広く理解して頂ければ幸いと思いました」


 三人いるが主にインタビューに答えてくれたのは二十代の男性だった。名は名取誠司(ナトリ セイジ)という。ちなみに中年女性は郁磨静(イクマ セイ)、老婆は播磨陸(ハリマ リク)といい、神道本庁には属さない神道の流派だった。


「ただ三神主と呼ばれていますが、神主は播磨の御婆のみで郁磨さんと僕は御祓の手伝いをさせていただいているという形です。そのせいか三神主と呼ばれ始めました。呼ばれ名は偶然が重なり現れた言葉ではありますが、我々は神からの送り名と感じましたので、それをそのままSNSなどで使わせていただいております。あとは三神主のという名で噂が広がり、その名で検索や噂話を頼りに訪ねて来られる方もいらっしゃるので、昔の名では……」

「失礼ながら昔の名というのは?」

「そのまま『播磨の御婆』です。けれどそれでは広く怪異を鎮めようにも名が広がらず苦労しておりました」

「お話を伺うに怪異を祓うことについて情熱をもっておられるようですがなぜなのでしょう?」

「おかしなことをおっしゃる。凡そ霊感があり浄不浄の有無がわかるならば不浄を祓うのが生まれながら霊能力を授かったものの定めなのは必定。霊能はこの世をこの世たらしめんとする力なのです。……ただお恥ずかしながら、我々もこの世に生きるものの道理として生きていかなければなりません。面倒なことも多いですが、多少なりとも金銭を頂けなければなりません」

 金銭の話となったとき、播磨さんは堪えられないように「そうそう、仕方ない、仕方ない」と笑いながらいった。


(金銭の話のところに赤マーカー。赤ボールペンで「困っているのかも。要確認、連絡」)


「それはそうですよね。私も食べるために文章を書いておりますのでわかります。あと神主というからにはやはり祀ってある神社があるのでしょうか」

「はい。僕、名取は御芍神紫(ミシャクジ)さま、郁磨さまは荒覇吐(アラハバキ)さま、そして播磨さまは……これは口にするのは憚らられる御名なので御容赦ください。そしてそれぞれに祀る神さまがいらっしゃるので、それらの霊威を取り纏めるために播磨さまを神主という形で上に立ってもらい取り仕切っております。ただ特定の神社というのは持ってはいないということになっています。そのことに関しては神社本庁と揉めることになりますので記事には伏せて頂ければ幸いです」

「そうですか。では、次にお見せできる範囲でよろしいので御祓の方を……」


(御祓は参考写真、動画を参照。

写真はNo.三、九、十二をメインに、文章をいれて空きがあるようなら二八もいれたい。

御祓の要望、連絡先は××××まで

SNSは@××××、ホームページは××××

書籍は××××を参考に。

ミシャクジ、アラハバキ、名もない神については書籍×××が近いか? 歩き巫女、彼らに近い御祓、神事については参考資料をNo.五を参照。御祓経験者インタビュー(四名)、SNSの反応は参考資料No.四)


「なるほど。では次に怪異でもっとも凄かったのはどういったものでしょうか? なんだか俗っぽい話で悪いのですが、最近は漫画、アニメの影響もありますので、雑誌的にもそういった話が喜ばれる傾向にあるんですよ」

「わかります。僕も漫画は好きですから。そうですね。個人的には……」と名取が祓った怪異について考えているようだったが、横から播磨が名取に耳打ちした。

「播磨さまは△市の墓場が凄かったと申しております」

「墓場?」

 名取は困ったように笑い「墓場といってもかなり昔……古墳時代とか飛鳥時代とか、そういった遺跡のことです」と播磨にかなり気を使って話しているようだ。どうやら播磨にとっては古墳も墓場も一緒らしい。もしかしたら家も廃墟も遺跡も一緒なのかもしれない。やはり霊能者は一般人とは違った視野をもっているのか、それとも老化による認識力の低下によるものか判断がつかなかった。

「それはどういった怪異なのでしょう」

「うーん、完全に人の認識を狂わせます。いや、元々の感覚を呼び戻すのではないでしょうか」


(詳しくは資料No.一参照)


 また播磨が名取に耳打ちをした。

 なぜか直接話すのは嫌らしい。

「人は人であり、自然と調和することを良し、とする。けれど調和のないありのままの人にする力がそこにあったと」

「どういうことですか?」

 名取はどういっていいのか悩んでいるようだった。しかしなんとか頭のなかで言葉をまとめあげたようにいった。

「人は不浄なのです。浄を目指している途中の生き物なのです。この世にそういった存在はありません。ただ人のみがそういった存在なのです。そして怪異もまた不浄なのです。両者は似通っております。けれど違うものだと確信しております。今の言葉はお解りにならなくても結構ですが」

 名取の謎めいた言葉に私はなぜだか言葉をつなげなかった。

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