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まえがき
1968年に起きた東京、府中の三億円事件をご存知だろうか。
恐らく、事件のことは誰でも知っている。
だが、真犯人が実際は誰だったのかは、本人しか知らないことだろう。
作品というのはフィクション・ノンフィクションを問わない。
わたしも、過去の出来事をこうして小説にして、精算したかっただけだ。とでも言っておこうか。
もしかしたらあの人の事かも、と信じてくれる人がいて、上手く書かれたただのノンフィクションだなと笑ってくれる人がいて、かまわない。
時間は戻せない。だからわたしはこの作品を書くことで、あまりにも大切すぎたのにあっけなく失ってしまった過去と彼を無かったことにしたい。
出来事の真偽はすべて、本人だけが知っていることだ。