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童話集「下駄箱」

カーくんの宝物

作者: 星野紗奈

どうも、星野紗奈です('ω')


最近浮上頻度が低くて申し訳ない限りですね。投稿用に書くより応募用に書くもののほうがどうしても多くなってしまって……。

今回の作品も元々応募用に書いた童話になります。

私が投稿した今までの童話っぽい作品を読んだ方ならわかるかもしれないですが、一応注意書きをしておくと、ハッピーエンド絶対主義の方は回れ右をお勧めいたします。


童話の話のついでですが、今年は冬の童話祭開催されますかね?

昨年は乗り遅れてしまったので、今年はぜひとも参加したい所存です。


前書きが長くなりましたが、さっそく本編をお楽しみいただければと思います。

それでは、どうぞ↓

 あるところに、一匹のカラスがいました。そのカラスは他のカラスたちよりも体が少し小さくて、よくいじめられては泣いていました。

 ある日、カラスが「かぁかぁ」とめそめそ泣きながら公園まで逃げてくると、女の子と出会いました。その女の子はカラスを見つけると、たったった、と近づいてきました。

「カーくん、元気ないね? どうしたの?」

 カラスはびっくりしましたが、その女の子はいつもいじめてくる他のカラスや追い回してくる人間とは違って優しそうだったので、カラスは逃げませんでした。ですが、言葉が通じないので、弱弱しく「かぁかぁ」と泣くことしかできません。それを見た女の子はこう言いました。

「じゃあ、カーくんに私の宝物あげる!」

 女の子は自分の左腕につけていたブレスレットを外すと、カラスの首にそっとかけてくれました。それは、ピカピカ輝く石がついたネックレスのようでした。

「私とおそろいだよ! キラキラしてて、とってもきれいでしょ? だから元気出して?」

 女の子はそう言うと、カラスのことを右手で優しく撫でてくれました。その腕にはブレスレットがつけてあり、カラスがもらったものと同じ石がキラキラ光っていました。なんだか嬉しくなって、カラスはまた「かぁ」と泣きました。


 次の日も、カラスは他の大きなカラスにいじめられました。でも、今度は泣きませんでした。泣きそうになった時は、首から下げた女の子からの贈り物がキラリと輝いて、元気をくれたのです。

 カラスがぴょこぴょこ歩いて公園に行くと、昨日の女の子がいました。ですが、猫背で下を向いていて、ちょっと様子がおかしいです。女の子がふと顔をあげると、カラスがいることに気づきました。すると、女の子はわんわん泣き出したので、カラスは慌てて女の子に近づいて、安心させるように擦り寄りました。

「昨日ね、カーくんに宝物わけてあげたんだよってママにお話したらね、ママがすっごく怒ったの。そしたら、おそろいの宝物捨てられちゃったの。もうあんなカラスに触るんじゃないよって」

 女の子はえぐえぐ泣きながら話しました。カラスはとても悲しくって、なんとかしてあげたいと思いました。そうだ、僕が君の宝物を探してこよう。そう決めると、カラスはバサバサと羽ばたいていきました。

 カラスは町中のごみ置き場をまわりました。空を飛んでごみ置き場へ行き、つついてごみ袋を破り、女の子の宝物を必死に探しました。途中で何度も人間に叩かれました。他のカラスにもたくさんつつかれました。痛くて、辛くて、悲しくて、痛くて。それでもカラスはあきらめませんでした。

 僕がやらなきゃ。僕が君の宝物を取り戻すんだ!

 空が真っ赤になるまで、カラスはずうっと女の子の宝物を探し続けました。そうして、ようやく見つけたのです。カラスは急いで女の子の家を探します。早く届けてあげよう、きっと喜ぶぞ。そう考えて、カラスはへとへとの体に鞭を打ち、窓から見える女の子の姿を一生懸命探しました。

 女の子の家を見つけた頃には、カラスはもう飛ぶことができませんでした。いろんなものに傷つけられた体はもうボロボロで、歩くのもやっとでした。

 しかし、女の子の家の庭までやってきて、ふとカラスは思いました。僕がいたら、また女の子は怒られてしまうかもしれない。君を泣かせてしまうかもしれない。

 カラスは大きな窓をそっとつついて、コンコンと音を鳴らしました。そして女の子の宝物をそこに丁寧に置くと、黙って去っていきました。

「……カーくん?」

 女の子の声が聞こえた気がしましたが、カラスが振り返ることはありませんでした。

 その時です。女の子とは違う、恐ろしい声が後ろから聞こえました。

「カラスがこんなところにもいるなんて。まったく、あの子もなんでこんなのに触るのかしら……。ほら、さっさと出ていけ!」

 きっとあの子のお母さんに違いないとカラスは思いました。けれど、逃げる力はもうどこにも残っていません。女の子のお母さんにほうきで叩き出されて、カラスは道の真ん中にごろりと倒れました。あの子のおかげで僕は強くなれたんだ。こんな格好悪い姿を女の子に見せる訳にはいかない。そう思い、もう一度立ち上がろうとしましたが、うまくいかず、また力なくぱたりと倒れてしまいました。

 カラスはたくさん悲しくなって、「かぁ」とか細く泣きました。カラスの胸元で砕けた光は、キラキラしていてとても綺麗でした。

ありがとうございました!

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