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97 確認作業終了後、とんでもない結果に……! -1


「まあまあ、それより確認を」


「まるで地形が違うけど、場所はここで間違いないわ。本当に土砂を撤去してくれたみたいね……。撤去したってレベルじゃないけど……。後、橋の方はよく分からない。よく分からないとしか言いようがない!」


 若干混乱しているのか、大声かつ早口にまくし立てるロザリーさん。


 肩で息をし、興奮が冷めない様子だ。


「お、落ち着いて」


「そ、そうね。取り乱してごめんなさい」


「もう崩れないでしょうか? 他に気になる場所があれば、ついでに取り除いておきますけど」


 分からないから平たくしておいたけど、これで良かったのだろうか。


 素人では分からない部分とか指摘してもらえると助かる。


「崩落が発生した当時に気になっていた場所は君が処理してくれたみたいね……。崩れようがない位に平らね。必要ないと思うけど、後で人を呼んで細かい部分の点検と補修をしておくわ」


 後は専門職の人の仕事か。


「ありがとうございます。仮設の橋はどうですか?」


「橋の方は検証が必要ね。大工職人に点検してもらって、補強工事が必要か確認するわ。問題なければ、あの橋を使って足場を広げていく形かしら。仮設の橋はそのまま馬車が通るようにして、広げた足場でルノンキュル大橋を再建させていけばいいわね」


「おお、良かったです」


「……そうね。本当に良かったわ。納得できない部分が多々あるけど良かったわ」


「じゃあ、少し休憩させてください。全力で走ったので、体力を回復させたいです」


 本当はさして疲れていない。


 だけど、ロザリーさんを休ませた方がいいと考え、提案した。



「まあ、あれだけの速度で走れば疲れもするわよね。分かったわ、四十八時間くらい休憩しましょうか」


「自然な流れでそういうの差し込んでこないで下さいよ」


「何のことかしら。それより、あそこが座るのにちょうど良さそうよ」


 話題を逸らそうとしたのか、そっぽを向いたロザリーさんが四角い岩が椅子のように転がっている場所を指す。


「分かりましたよ……。どっこいしょっと。あ、どうぞ」


 元の大きさに戻ったミミと一緒に皆で腰掛け、餅スキルで出した苺大福を配る。


 ロザリーさんが激務に追われて疲れているようだったので、癒やしスキルも注ぎ込んでおいた。ついでにコップも出して生活魔法で水を注いで渡す。


「ありがとう。携帯食かしら」


『わーい!』


「俺の故郷の甘味です。やっぱり、疲れたときは甘い物ですよね。うん、うまい」


 苺大福を頬張り、水を一杯。


 うん、ほっとするな。


『美味しいね〜』


「じゃあ、私もいただくわ。……あら、美味しい。ベリーが入ってるのね。――こうやって景色を眺めながら食べていると心が安らぐわ。今まで仕事に追われていたのが嘘みたい。う……、何か凄くスッキリしてきたんだけど……。むしろ、スッキリしすぎなくらいなんだけど……。疲れが取れて、気力が漲ってくるくらいなんだけど? これなら仕事がバリバリできそうで凄く嫌なんだけど!?」


「やる気が出るのはいいことじゃないですか」


 澱んだ目が透き通り、シャッキリした表情のロザリーさんにそう言う。


「不自然に気力が出すぎなのよ! っ!? この甘味のせいね! 今までの異常なことから察するに間違いないわ!」


「勘ぐりすぎですって。いくらなんでも甘味を食べてそんなことになるわけないじゃないですか」


 妙な所で察しのよさを発揮するロザリーさんに必死で誤魔化す。


 この人に癒やし効果スキルについて説明すると、サボることに利用しそうなんだよなぁ。


 黙っておくか。


「それもそうね……。でも、妙にスッキリしたわ。あらゆる疲れが取れて、集中力が増した感じよ。ずっと悩まされていた頑固な肩コリまで無くなってるんですけど……」


「それは良かったです。それじゃあ、そろそろ戻りますか」


『はーい!』


 ミミが元気な返事とともに小さくなり、俺のポケットへ飛び込んでくる。


 なんとも素早い。手馴れた動きだ。


 俺は立ち上がると、ロザリーさんへ手を差し伸ばした。


 手を握ったのを確認して引き起こし、横抱きにする。


「まるもっちー君、もう時間のことはとやかく言わないから、帰りはもう少しゆっくりにしてもらえないかしら……。速すぎると怖いから……、お願いします」


「分かりました。それじゃあ、行きますよ」


 俺は頷くと、走り出した。


 ロザリーさんの要望に応え、少し速度を落とすことにする。


「ま、待って。まだ、心の準備がぁああああああッ!?」


 初めは助走の意味も込めてゆっくり。体が温まってきたところで、脚に力を込め、速度を上げていく。行きの七割くらいを意識し、ゆっくりと走る。


 周囲の景色がすりガラス越しに見たようにぼやけ、高速で後ろへと消えていく。


 その日も日が暮れるまで走り、適当な所で一泊。


 夜は仮眠程度に抑え、日の出前には出発した。


 気持ちよく風を切って走っていると、朝陽が上り始める。


 朝食を取るのに丁度いい時間になった頃にはシプレの街が見えてきた。


 今度は失敗しないように、少しずつ速度を下げ、門の前に来るころには歩くようにして止まる。


 急停止せずにうまく止まれた。大成功だ。


「着きました」


「速くしなくていいって言ったじゃない! 早くしなくていいって言ったじゃない! もう! もう!」


 ぷうっと頬を膨らませたロザリーさんが俺の肩をぺちぺちと叩いてくる。


「ええ? 大分速度を落としましたよ」


「分かったわよ! 無事着いたし、それでいいわよ!! 報告してくるわよ!!! 君も一緒に来なさいよ」


 三段階に言葉を強められ、ギルドへ連行される俺。


 というわけで、ギルドへ逆戻りである。


「戻りました」


 バンッと蹴るように扉を開けるロザリーさん。


 不機嫌が極まっている。


「早っ!」


 俺たちの帰還にギルドマスターが驚く。



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