94 意気投合。とんでもないシンクロを見せる……!
「シモーヌさんは何を報告しに来ていたんですか?」
部屋へと帰る途中、気になったので尋ねてみた。
「本来は、タマリの街からここまでの状況確認だ。街道が通れなくなったために、冒険者が活動できないエリアが発生してしまっているからな。モンスターが増え過ぎていないかの調査だ。あとは、街道の状態を見るのもだ。損傷がひどくなっていないかどうかの確認だな」
「なるほど、そういうことだったんですね」
もしかすると、道中でビッグホーンライノが出たのは街道が通れなくなったのが原因かもしれないな。
人の出入りがなくなった場所にモンスターが進出し、なわばりの拡大が起きたのではないだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に部屋に着いた。
ギルドマスターが勢いよく扉を開け、ずんずんと中に入っていく。
「待たせたな、シモーヌ」
「いえ、大丈夫です」
「よし、まるもっちー。お前はそこに座るんだ」
ギルドマスターがドカッと椅子に座ると同時に、顎でソファを指す。
「え? あ、はい」
ギルドマスターに促され、ソファに腰掛ける。
話が始まるのをじっと待つも、しばらく無言の間が続いた。
言い出しにくいことなのだろうか……。
数秒の静寂が続いた後、ギルドマスターがごくりと唾を飲み込み、口を開いた。
「その……、なんだ……、あれだ……」
俺は頭上に「?」を浮かべ、首を傾げる。
急に歯切れが悪くなった。どうしたんだろう。
「お前が来る前にシモーヌから報告を受けたんだが……」
「はい」
中々本題に入らないな。表情も険しいし、妙な溜めが気になる。
「その……、お前が街道を塞いでいた土砂を撤去したうえに、崩落したルノンキュル大橋の側に馬車が通っても大丈夫な強度の足場を組んだと聞いたんだが……。冗談だよな?」
「事実です。私が嘘をつく理由がありません」
シモーヌさんが冷たい声ですっと割り込む。
「いや、お前の勤務態度、評価は聞いている。だがな……。何かの見間違いとかじゃないのか? どちらの作業も数日で終わるようなものじゃないんだぞ」
「まるもっちーさんとミミちゃんは、どちらの作業も一時間未満で済ませていましたよ」
なるべく私情を挟まないようにしているのか、淡々とした口調で事実だけを報告するシモーヌさん。
「おかしいだろ!?」
ギルドマスターがバンと机を叩き、声を張り上げる。
気のせいか、こめかみがピクピクしているように見える。
「それは私も思います」
「だよな!」
「ええ!」
「おかしいだろ!」です!」
意見が一致したのが相当嬉しかったのか、熱いまなざしを交わし、がっちりと握手するギルドマスターとシモーヌさん。
二人は握手したまま、俺の方へ同時に視線を向け、
「「おかしい!!!」」
叫んだ。
息ぴったりだった。




