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92 倉庫へ到着すると、とんでもない事態に……!


 ギルドマスターに連れられ、素材買取所の倉庫へと入る。


 中はガランとしていて何もない。


 視線を巡らせると、隅のほうで点検作業をしている女性が一人いた。


 こちらの気配を感じ取り、振り向く。


「あら、ケヴィン、自らお出ましなんて珍しいわね。どうかした?」


「おう、ポーラ。以前話していた、例のやつだ。……分かるな?」


「ご覧の通り、半信半疑で準備はしていたけど、…………あの話、本当だったの?」


「本当だ。こいつが張本人のまるもっちーだ。まるもっちー、素材買取所のまとめ役のポーラだ」


「まるもっちーです。ポーラさん、今日はよろしくおねがいします」


 ギルドマスターに紹介され、ポーラさんに挨拶する。


 事前に連絡が行っていただけあって、事がスムーズに運ぶなぁ。


「ポーラよ、よろしくね。それじゃあ、こっちよ。付いてきて」


「おう、頼むわ。言わないでも分かっていると思うが、全て内密で頼む」


「はいはい、分かってるわよ。それよりロザリーの顔色が悪いんだけど、大丈夫かい?」


「……今は大丈夫です。これからどうなるか分かりませんけどね」


 ロザリーさんは投げやりに言葉を返すと、俯いたままギルドマスターに対する怨嗟の言葉を呟き続けていた。小声でずっと「禿げろ」って連呼している。こ、怖い。


「ま、まあ、あれだ……、頑張りなよ!」


 ポーラさんが投げやりな励ましの声をかけつつ、倉庫の奥へと進む。


 一際大きな扉を開け、中へと案内された。


 初めに入った部屋と同様に内部は何もなく、広大なスペースが確保されている。


「じゃあ、どうしようかしら? 何頭あるの?」


「百八十七だそうだ」


「…………そんなにいらないんだけど」


 凄く嫌そうに顔を歪めるポーラさん。


 ロザリーさんが「くく、道連れです」と陰気な表情で唇を歪める。


 これは引き取り拒否されるかも……。


「お前、何言ってるんだよ! 百八十七だぞ! しかも、さっき説明したとおり、タダでくれるって言ってるんだぞ! 全部いるに決まってるだろうが!」


「倉庫も冷蔵庫も埋まっちゃうんですけど。流通が停滞してるから、さばきようがないんですけど?」


「なんとかならんのか!?」


 両手をわなわなさせながら、すがるような声を出すギルドマスター。


「こっちに入りきらなかった分をケヴィンの家の冷蔵庫に保存しておいてくれるなら、受け取るけど?」


「入るわけないだろ!」


「分かりました。ギルドマスターの家に業務用倉庫タイプの冷凍庫の搬入ですね。現金一括払いでギルドマスターが購入っと」


 浮き浮き顔でロザリーさんがメモを取る。


「ロザリー! はやまるな!」


「ならどうするんですか? 他の業者から倉庫を借りますか?」


「量が量だけに、賃料がかかりすぎる……」


「では、ギルドマスターのポケットマネーで倉庫型冷凍庫購入決定ですね」


「ふざけんな!」


「とにかく、うちの倉庫には入りきらないからね。全部引き取るってんなら、ちゃんと解決策を用意しなさいよ」


 アックスブルの納入方法が解決できず、三人で揉め始める。


 ロザリーさんが何気に容赦ない。ここぞとばかりにやり返しているな。



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