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90 面会の結果、とんでもない話し合いに……!?


 階段を上り、最上階の部屋の前に着くと、ロザリーさんが扉をノックした。


「ギルドマスター、タマリの街から連絡のあった冒険者のまるもっちーさんが到着しましたので、お連れしました」


「おう、通せ。ロザリー、お前も一緒に入れ」


「はい。まるもっちーさん、こちらへどうぞ」


「失礼します」


 中へ入ると正面にテーブルとソファが二つ。その奥には巨大な執務机。


 その机の主であるギルドマスターが、こちらへ視線を向けた。


「よく来たな。俺がシプレの街のギルドマスター、ケヴィンだ。ダイアナからの連絡で大体は知っている。アックスブルの売却だな?」


 威厳のある声で問われ、ぶるりと身が震える。


 つい視線を逸らしてしまうと、ギルドマスターの隣にはシモーヌさんが立っていた。


 あれ、報告が終わっていないのかな?


 ちょっと気になるけど、今はそのことは置いておき、ギルドマスターから振られたアックスブルの話を進めていく。


「あ、いえ、できれば寄付にしたいんですけど」


「は?」


 俺の言葉が予想外だったのか、間の抜けた声を漏らすギルドマスター。


「この街はブラックドラゴンで大きな被害を受けたと聞きます。ですので、アックスブルで少しでも支援できればと思ってここまで来ました」


「……一応、報告は受けている。だが、俺の勘違いという可能性もある。だからお前に直に聞く。何頭だ? 一体、お前はアックッスブルを何頭持ってきたんだ?」


「百八十七頭ですね。解体はしていない状態です」


「直接聞いてもピンとこねえ……。実際、この街を再建するには金が必要だ。特にアックスブルはこの辺りで獲れる特産品で、高級品だ。この街でも需要があるし、他の街に売ることもできる。こちらとしては願ったり叶ったりだ。だが、お前はそれでいいのか? 儲けが一切ないぞ?」


「一応、ここに来る前にある程度は売りさばいたので、儲けが一切無い、ということはありません。この街で依頼もこなすつもりですし、お金に困ることもないと思うので大丈夫ですよ」


 タマリの街で多少売ったから、お金に困っているというわけではない。


 まあ、一生遊んで暮らせる金があるわけではないけど。


 ブラックドラゴンの被害は災害みたいなものだし、こういうときは協力しあうべきだよね。


「……分かった。受け取ろう。まるもっちー、恩に着る!」


 俺の言葉を聞き、ギルドマスターは机に頭突きを食らわさんばかりの勢いで頭を下げた。


「あ、でも……」


「なんだ? 何でも言ってくれ」


「俺からの寄付ということは伏せておいて貰えないでしょうか。これからも冒険者として活動していきたいので、ここで変に目立ちたくないんですよ」


 その辺りはダイアナさんにも気を使って頂いているので、出来れば公にしないでほしい。


 お金ではないけど、大金と同等の価値がある物を寄付したとなると、変な人が言い寄ってきそうで怖い。


「……確かに、鉄級のお前がそんなことすりゃ、色んな奴が寄ってきて身動きが取れなくなりそうだな……。分かった、最小限に食い止めよう。というか、お前の機嫌を損ねて、この話が無かったことになる方がこっちは困るんだ……、何とかする。ただ、買い取りではなく、寄付となると俺の管轄から外れる。が、お前を引っ張りまわして、面倒だからやっぱり止めるとか言われたら俺が責められる。だからまあ、うまく処理しておくよ。一応書面にまとめるから、目を通せ。後、どこかの段階で街長と会ってもらうことになるから、それは了承してくれ」


「分かりました。お気遣い感謝します」


「他に何かあるか? 無ければ、素材買取所の倉庫へ直行だが」


「今は特にありません。倉庫に行きますか」


「よし、行くぞ。ロザリー、聞いての通りだ。後で諸々の手配を頼んだぞ」


 俺の返事を聞き、立ち上がったギルドマスターはロザリーさんに指示を出しながら歩き出す。



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