表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/322

84 跳躍した結果、とんでもない事態に……!


 上流に行けばさっき見た吊り橋があるけど、そこまで移動する必要もないだろう。


「今何とおっしゃいましたか!?」


 シモーヌさんが聞き捨てならないといった表情で大声を出す。


 俺はそんなシモーヌさんをスルーして横抱きにすると、ミミに声をかける。


「ミミ、しっかり掴まっていてね」


『掴まりました!』


 ポケットの中のミミに指示を出せば、ワクワクしているのを隠しきれていない元気な返事が返ってきた。


 ミミが身構えたのを確認した俺は助走をつけるため後退。


 五十メートルほど移動したところで立ち止まり、目標を見据える。


「まるもっちーさん! 話を聞いてください!」


 シモーヌさんが俺の胸を叩いてくるが、話は崖を飛び越えたあとにでも聞けばいいだろう。


「よし、行くぞ〜!」


 俺は皆に合図を送ると、一気に駆け出す。


 速度を目一杯上げ、崖のそばに辿り着くと同時にジャンプ。


『キャー♪』


「キャァアアアアアアアアアアアッ!?」


 二人の奇声を聞きながら向こう側まで跳躍し、滑るようにして着地する。


 大成功だ。



「余裕だったな……」


 うん、楽勝だった。


 着地点を見れば、崖から五倍以上離れた所だ。


 これならもう少し力を弱めて、衝撃を少なくするようにした方が良かったかもしれない。


『すごーい! 飛び越えちゃった!』


 目をキラキラと輝かせ、大興奮のミミ。


「死ぬかと思った……。死ぬかと思いましたよ!!」


 目の光を失い、涙目で俺の胸をたたき続けるシモーヌさん。


 なんとも両極端な光景である。


「す、すいません。でも、どれだけ説明しても飛ぶことに反対したでしょ?」


 そんな気がする。そうなると結局押し切って飛ぶことになるんだよな。


「しますよ! 普通はします! して悪いですか!?」


 目を見開いたシモーヌさんが三段階に声を荒らげてくる。う、ちょっと怒らせちゃったか。


「お、落ち着いて下さい。絶対跳べる確証がないとやらないですって」


「もうっもうっ! 本当に怖かったんですからね!」


 切れたシモーヌさんが両手で俺の頬を摘まんで引っ張ってくる。ご、ごめんなさい。


『大丈夫? もう怖くないよ?』


 心配したミミがシモーヌさんの体を優しく擦っていた。


「うう」


 取り乱したシモーヌさんだったが、ミミに体を擦ってもらい、少し落ち着きを取り戻しつつあった。


「しかし、このままだと他の人が立ち往生しちゃうな。一応遠くに吊り橋があったけど……」


 折角土砂を撤去しても、これでは渡れない。


 さっき見つけた吊り橋まで移動して渡り、またここまで戻って街道を進むのはかなり手間だ。


「ここに一番大きな橋があったわけですからね。別の橋のある場所が、ここから離れているのは仕方ないですよ」


 シモーヌさんの言葉に、それもそうかと納得する。


 巨大な橋があったのに、その隣に小さな吊り橋を建てる意味が無い。


『マスターみたいにジャンプしないの?』


「普通の人には難しい幅なんだ」


『ミミでも無理?』


「どうだろう。今のミミなら案外飛べそうだけどな……。届かなくても蔓を伸ばして掴まればいけるんじゃない?」


 ミミなら、意外といけそうな気がするんだよな。


『そっかぁ! それならミミでもできそうだよ!』


 ミミがパッと顔を輝かせて笑う。うん、やっぱり渡れそう。


「ミミちゃんが何を言っているか分からないですが、雰囲気から察すると、ミミちゃんもここを渡れちゃうんですね……」


「ええ、多分。でも俺たち以外が通れないのは不便だよなぁ。石で塞いだら、水をせき止めちゃうしなぁ……」


 崖のずっと下は川になっていた。糸のように小さく見えるが、かなりの水量だ。


 アイテムボックスにある岩を放り込めば、橋っぽいものができるかもしれない。

 しかしそれだと、水をせき止めてしまう。


 それでは駄目だ。


「ん、そうだ。ミミの力を使って、蔓や木で橋を作れない?」


 思い付きを口に出し、ミミに聞いてみる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ