表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/322

83 山越えをした結果、とんでもないことに……!


 長距離でのペース配分を心掛けひた走る。


 ゴールが人に会うことだから、距離がはっきりしない。


 そのため、余力を残しての走行だ。


 数秒で出会った地点に戻り、目指すと言っていた山の方へ向かう。


 道なりに走り、気がつくと頂上に到着していた。


「あれ、擦れ違わなかったよな……」


 あれだけ巨大な荷物を背負っているから目立つ。見失うわけがない。


 しかし、会うことなく頂上まで来てしまった。


 もう下山したのだろうか。


「もう少し進んでみるか……」


 俺は一気に山を駆け下り、細いつり橋がある地点まで駆け抜けて停止する。


「あれ? いない……」


 結局、ここまで来ても会うことはできなかった。


 吊り橋を渡ってしまっているのなら、土砂が撤去された情報は必要ない。


 そもそも、この辺りまで来ているなら、引き返した方が時間が掛かってしまう。


 あの人、凄い健脚の持ち主だったのだろうか。


 もし、事故にあったり、モンスターに襲われたりしているなら、何かしらの痕跡や音が聞こえる。しかし、そういったものは一切なかった。


 これは無事に進んだと考えるべきだろう。


 あの人、一人で行動していたし、もしかしたら凄い実力の持ち主なのかな?


「仕方ない、戻るか」


 結局会うことは叶わなかった。


 このまま崖沿いに下りて、反対方向から土砂を撤去した場所へ向かった方が近道かもしれない。が、知らない道を進めば、迷って時間がかかってしまう可能性もある。


 ここは無難に来た道を戻ることにする。


 俺は、急いで二人が待機しているテントへと戻った。


「お待たせ」


 テントの入口を開け、中に入る。


 すると鼻歌を歌うシモーヌさんの膝の上で楽しそうにリズムを刻むミミの姿があった。


 俺に気付くとピョンと立ち上がって、脚に抱き付いて来る。


『お留守番できたよ!』


「やるな!」


『えへへ……』


「シモーヌさんもお待たせしました」


 抱きついてきたミミの頭を撫でながら、シモーヌさんに話しかける。


「いえ? ついさっき座ったばかりなんですけど……。もう行ってきたんですか? 今出たばかりなのに……」


 と、困惑の表情を見せるシモーヌさん。


 でも、行ってきたんだよね。


「はい。でも会えませんでした。入れ違いになったみたいですね」


「ええ? その人も速度がおかしいというか、なんというか……」


「まあ、そんな事もありますよ。用は済んだので出発しましょうか」


「わ、分かりました」


 結局会うことは叶わなかったが、仕方ない。


 俺はシモーヌさんに事情を説明した後、テントを片付け、橋が崩落した現場へと向かった。


 …………


 シモーヌさんを横抱きにして走っていると、眼前に巨大な崖が見えてきた。


 速度を落とし、立ち止まる。シモーヌさんを降ろし、崖へ近づいていく。


 注意深く見れば、橋の残骸のようなものが辺りに散らばっていた。


 あそこが問題のポイントだろう。


「これが話に出ていた橋か……。本当に崩れてしまっているな」


 崖の際にそれらしき名残りが少しあるが、橋と判断できるパーツは何一つ残っていなかった。


 崖の周囲も所々削れている。この辺りでブラックドラゴンが暴れたのだろうか。


「原形をとどめていないですね。これではゼロから作りなおさないと……」


『下に落ちたのかな?』


「みたいだね。これもブラックドラゴンの仕業なのか」


 ミミと一緒に崖下を覗き込めば、水に流されずに残っている橋の残骸が見えた。


「はい、そう報告を受けています。幸い死者は出なかったそうですが、深刻な被害ですね」


 と、シモーヌさんが教えてくれる。


 これは建て直すことになるし、大変だな。


『別の場所から渡るの?』


「いや、これくらいならジャンプして飛び越えられるかな。名乗魔法の効果も残ってるし、いけるだろ……」


 ミミに聞かれ、飛び越えると答える。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ