81 とんでもない量の土砂が突然……!?
「連鎖的に崩落が起きたみたいですね」
シモーヌさんの言葉を裏付けるように、堆積の後は二、三重になっていた。
一度崩れた影響で、他の部分も脆くなって崩れたようだ。
それが全て重なって壁のようになってしまっている。
堆積した土砂は軟らかく、不安定。
無理に登ると足元が崩れたり、埋まったりしてしまう可能性がある。
「確かにこれだと通りようが無いな。よし……、ちょっと試してみるか」
『どうするの?』
「ミミ、危ないから、ちょっと下りてね。無属性魔法で吹き飛ばしてみるよ」
『あのかっこいいやつ?』
「かっこいいのかな……。これだけ的があれば、撃つ練習にもってこいだよな」
不完全な状態でもかなりの威力を誇った魔法だ。
あれを使えば、この程度の土砂なら何とかなりそうな気がする。
ただ、威力が洒落になっていないので、周囲に人がいないことを確認してから撃つ必要があるだろう。
誰もいないよな、と辺りを見回すも人の気配はなし。
きっと、シプレの街へ向かう人は、さっき会った人と同様に回り道をしているのだろう。
『マスター、頑張ってー!』
「おう、やるぞ〜!」
声援を受け、ガッツポーズで応える。
ミミの声が聞こえないのか、こちらのやりとりが気になったシモーヌさんが近寄ってきた。
「あ、あの……、何をするつもりなんですか?」
「ちょっと魔法で土砂を撤去できないか、試してみます」
「は、はぁ……」
「危ないからミミと一緒に下がっていて下さいね」
今いちこちらの話が理解できていないシモーヌさんに離れてもらい、魔力を増幅させる。
「集中、集中……」
高めた魔力を右手に集束。
激しく暴れる力を安定させようと、左手で右手首を掴み、深呼吸する。
「ちょっと弱めに……」
ビッグホーンライノを仕留めたときと同じ力で撃つのは強すぎる。
もっと弱く。軽めに。威力を落とすためにも名乗魔法は使わない方がいいだろう。
じわじわと力を調節し、弱めを意識して抑えに抑える。
「おし。――もちもち波!」
大体この位かな? という力加減で無属性魔法を発射。
右手から放たれた光線は土砂を直撃。
接触と同時にカッと激しい光と爆音が周囲を包む。
しばらくすると、衝撃が収まり、当たった部分の土砂が消し飛んでいた。
余韻を残すように土煙が舞っているが、成功だ。
『わー! すごーい!』
「結構威力を絞ったのにこれか……」
小規模なトンネルを掘ったように、眼前の土砂が半分ごっそり消えてなくなった。
しかし、無駄が多い。集束した魔力を全て放てていない。
どうしても何割かは魔法に変換できずに霧散してしまう。
どうにも効率の悪さを感じる。
結果は成功だが、魔法の扱いは今一つ。
まだまだ使いこなせていない雰囲気が、体感としてある。
「よし、もう一度……。もちもち波!」
残りの半分も消し飛ばし、街道が開通した。
といっても道の部分の土砂が消えただけだ。
このままの状態では、また崩れてくるかもしれない。
何か、ネットのようなもので補強するか、コンクリで固めるくらいしないと、危ない。
しかし、そんな都合のいいものはないわけで……。
「うーん……、こうなったら徹底的にやっておくか。崩れ易そうなところは全部削り取って、傾斜をゆるくしてしまおう」
結論。まっ平らにすれば崩れない。
崩れる要素を完全に排除してしまおう。




