80 行き止まり。行動不能に陥りとんでもないことに……!
「やあ、こんにちは。こんなところを少人数でウロウロしているなんて、強気だね。君たち冒険者かい?」
強気だね、と言われるも、言った本人が一人で行動しているんだけど。
むしろあなたの方が強気なのでは、と思ってしまう。
「こんにちは。そうです、冒険者です。といっても新人ですが」
「定期便が止まっているのに、よくここまで来れたね」
「ええ、なんとか。貴方こそ、徒歩でシプレの街に向かうんですか?」
「まあね、私は仕事だから。今は定期便が通っていない分、稼ぎ時でもあるんだよ」
背負った大きな荷物に視線を向けながら、ニヤリと笑う。
「なるほど」
確かに、今、シプレの街へ行くことが出来れば、普段より色々売ることが出来そうではある。
商魂たくましい話だな。
「そうそう、君に声をかけたのは、この先のことを話しておこうと思ってなんだ」
「この先に何かあるんですか?」
「やはり知らなかったか。この先は土砂で塞がれて通れないんだ。更にその奥は橋が崩落しているとも聞く。だから、あの山の辺りから迂回しないといけない。土砂で塞がれている部分がなければ馬車や魔走車が使えるのだが、山を通るルートだと徒歩での移動を強いられてしまう。私はこのまま行くが、君達も充分気をつけた方がいい」
「そんなことになっていたんですね……。土砂が撤去されれば、橋が崩落していても進めるんですか?」
さっきの言い方だと、土砂崩れの方が大事に聞こえた。
橋がなくても向こう岸に渡れる手段があるのだろうか。
「橋は一つだけじゃないんだ。結界装甲陸船が通れるような巨大なものは一つだけだが、荷車が通れるものなら、離れた場所にいくつかある。馬車が使えればもっと商品を運べるんだが、土砂崩れでそれができないんだな、これが」
「わざわざありがとうございます。橋のことは聞いていたんですが、土砂は知らなかったです」
橋以外にも通れない場所があったのか。
シモーヌさんは知っていたのかな?
「うん、こういう時は互いに助け合うものだからね。休憩中に悪かったね。それじゃあ、これで私は失礼するよ」
「いえ、とても助かりました。道中、お気をつけて」
「うん、君達も気をつけてね」
お互いに挨拶を済ませると、商人風の人は巨大な荷物を背負っているとは思えないほど軽快な動きと速度で行ってしまった。
『回り道するの?』
「ん〜、一応どうなっているか見ていこうか。走って戻れば大したロスにならないしね」
ミミに聞かれ、考えをまとめる。
どういった状態なのか目で見て確認しておきたい。
そう考えた俺は一旦土砂で埋もれている方へ向かうことを決める。
などとミミと二人で行き先について話していると、シモーヌさんがゴソリと動いた。
どうやら周囲が騒がしかったせいで、目を覚ましたようだ。
「……ん、どうかしましたか?」
ぼんやりとした表情で目を擦るシモーヌさんに事情を説明すると、どうなっているか確認しておきたいと言われる。
意見が一致した俺たちは土砂に埋もれたエリアを目指して出発した。
目的地まで近かったらしく、少し走っただけで完全な行き止まりにぶち当たる。
土砂が広範囲で崩れ、完全に埋まってしまっていた。
「ここか。……これは凄いな」
『む〜、一杯積もってるね』
急斜面になっているところが土砂崩れを起こしたようだ。
積もっているのは土や岩だけでなく、生えていた木も混ざっている。
地形が変わり、道が完全にふさがれていた。




