78 とんでもない情報を入手……!
その後、無事宿を取り、食堂で夕食にする。
お勧めメニューを頼んで注文を済ませると、しばらくして店主が料理を運んできてくれた。
「はいよ、お待ち。今日はステーキセットだ」
「ありがとうございます。ところで、シプレの街へ向かう街道のことに詳しい人って誰か知りませんか?」
「街道?」
「あ〜、別に街道じゃなくてもいいんです。ブラックドラゴンの被害がどの程度のものなのか知りたくて」
少し情報収集でも出来ないかと尋ねてみたが、反応が薄い。
「詳しいことは行商の奴にでも聞かないと無理かもな」
「うーん、そうなると簡単に会えそうにないな」
知り合いの伝手なんてないし、話をしてくれそうな人を捜すとなると時間もかかる。
そこまでして、有用な話が聞けるとも限らない。
「どうした? ブツブツ言って」
「いやあ、定期便がここまでしか通っていなかったので、何かあったのかなと思いまして」
「俺でも知ってるような話だと、橋が崩れたってことくらいだな」
「橋ですか?」
「そうだ。定期便が不通になっているのはそのせいだな。実際に現場を見たわけじゃないが、直すには相当時間が掛かるって話だぜ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
橋が崩れているとなると、シプレの街に行くのは難しいかもしれない……。
俺は店主にお礼を言うと、食事を始めた。
隣を見れば、ミミがステーキをペロリと平らげるところだった。
物足りなさそうな顔をしていたので、三分の一ほど切ってあげると喜んでくれた。
…………
宿で一泊し、翌朝。
シモーヌさんとの待ち合わせ場所へ向かうことへする。
「さて、出発するか」
『ちょっと待ってください!』
「はい、待ちますよ」
部屋を出る仕草をすると、ミミに待ったをかけられる。
理由が分かっている俺は、素直に頷いた。
『スプーン、フォーク、お皿、カップ、タオルケット……』
ミミは一つ一つ名前を言って確認しながら道具を鞄へ詰めていく。
真剣な表情で道具を確認し、大事そうに鞄へしまっていく姿を見て、うんうんと頷く俺。
ミミは賢い。とってもお利口さんだ。
かわいいから、つい何でもやってあげたくなってしまうが、それはそれで成長の機会を逃がしてしまっているようで勿体無い。
ということで昨日買った収納鞄をひとつあげた。
そこにミミ専用の道具をあげて、自分で管理してもらうことにしたのだ。
道具の使い方を覚え、色々とできるようになればミミのためにもなるかなという考えである。
ミミ本人は単純に道具がもらえたことが嬉しくて仕方がないみたいだ。
道具を使うのも面白いと感じているらしく、嫌な感情は抱いていない。
『準備できました!』
道具をつめた鞄を肩にかけたミミが手を上げる。
「よし、じゃあ行くか」
『はーい!』
準備を終えたミミと手を繋ぎ、宿を出る。
時間には余裕があるため、のんびり歩いて街の出口へと向かう。
待ち合わせ場所のシプレの街へ続く方の出口に着き、辺りを見回す。
「さて、シモーヌさんはどこだろう」
『あ、いたよ!』
ミミが気付くのと同時に、シモーヌさんもこちらに気付き、手を振りながら駆け寄ってきた。
「まるもっちーさん、ミミちゃん、おはようございます」
「おはようございます」
『おはようございます』
「それじゃあ行きますか」
『行こー!』
「はい、よろしくお願いします」
挨拶をかわした俺たちは早速手続きを済ませ、街を出た。
やはりシプレの街へ向かう人はいないようで、衛兵の人にいぶかしまれてしまう。
が、シモーヌさんがギルドの職員と分かると納得してくれたようだった。
門を抜けいざ出発、とはならず、立ち止まる俺。
「……うーん」
どうしたものかと、腕組みして考え込んでしまう。
元々、ミミと二人で行く予定だったので、ちょっと計画が狂ってしまったな。




