77 ベーコン! 肉の燻製がとんでもなかった!
それは楽器だった。ギターやおもちゃのピアノのような鍵盤楽器、太鼓も見える。
「そうだよ。冒険者に人気の品だから、魔道具じゃないけど置いているんだ」
「え、楽器がですか?」
冒険者と楽器、一見関連性がないように思えるけど、何に使うんだろう。
「君、収納鞄を買うくらい儲けてる冒険者の癖に知らないのかい?」
「はい、最近冒険者になったばかりで」
「へぇ、期待の新人ってわけだ。それなら覚えておくといいよ。モンスターの中には楽器の音、音楽が苦手な個体が多いんだ。だから、野営時に演奏するのさ」
「おお? 初めて聞きました。本当なんですか、それ?」
獣は火を怖がるって聞いたことがあるけど、音楽は聞いたことがない。
あ、熊避けに鈴を持つっていうのはあったな……。
「まあ、長所と短所があるからね。だから、ギルドでは教えていないんだ」
「そう言えば、教本には載ってなかったな。どんな短所があるんですか?」
「まず、うるさい。眠れない。そしてかさばる。余分な荷物が増える。もう一つ付け加えるなら、演奏するには技術がいる。まあ、メロディーにならなくても効果は見込めるけど、そうなると益々うるさくなる」
「確かに」
楽器の音って防音設備がないと響くんだよね。
前の世界では部屋でくつろいでいる時に、遠くの演奏音が聞こえたりしたものだ。
「更に、全てのモンスターに効果がある訳じゃない。聴覚が弱いタイプには効果が薄いし、中には音楽を聞いても平然としている個体もいる。そもそも、興奮状態のモンスターには効果がないんだ」
「そうなると……」
「そそ、戦闘に発展した場合は音楽で追い払うことはできない。野営中も、モンスターに現在地を知らせることになって逆効果になるパターンもありえるのさ」
「それは意味が無いんじゃあ……」
使いどころが難しい。
慣れした親しんだ場所など、その地域に生息するモンスターを熟知している場合は有効かもしれない。
「使い方次第だね。中には大量のモンスターに囲まれた状態から脱出できた人もいるんだ。そういうわけで、お守り代わりに買う人もいるね」
「じゃあ、俺も買っておこうかな」
お守り、という言葉に魅かれ、購入を決める。
やっぱりこの店員さんは商売がうまい。
「お守り代わりといっても演奏できなきゃ意味ないよ? 君は楽器が使えるのかい」
「あれならいけます」
そう言って、端に飾ってある楽器を指差した。
「お、中々いいチョイスだね。ハーモニカは小さいし、うちもお勧めの品だよ」
「いや、吹けるのがそれだけなんですよ。というわけで一つください」
一時期触っていたので軽くなら吹ける。もっと練習したかったが、家族には不評だったため止めてしまった。
「はいはい、毎度あり。一杯買ってくれたから、これをおまけしておくよ」
「どうも」
おまけに貰ったのはベーコンだった。
……なぜにベーコン?
「そのまま食べて良し、野菜炒めに入れるも良し、私が趣味で作った自慢の逸品さ」
「売り物じゃないのか!」
それでおまけなのか。
まあ、折角だしありがたく貰っておこう。
「いっぱい買ったなぁ」
店を出て、そんな感想を呟いてしまう。
ついつい買ってしまった。
ちゃんと用途を考えて購入したが、量が多すぎる気もする。
アイテムボックスがなかったら、大荷物を運ぶことになっていただろう。
『いろんな物が見れて楽しかったね!』
ミミがニッコリ笑顔で言う。
「そうだね〜、使ってみるのが楽しみだな。それじゃあ、買い物も終わったし、宿を取ってご飯にしようか」
『はーい!』
「宿があるのはあっちの方かな?」
俺は元気一杯の返事を返してくれるミミと手を繋ぎ、宿を探した。




