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76 魔道具店で爆買いした結果、とんでもないことに……!


 前の世界の知識では一体どんな用途で使う物なのか見当がつかない形状に目を奪われる。


 どの品も余計な装飾などが一切なく、実用性重視といった無骨なデザインの物が目立つ。


 見た目より、耐久性に特化した雰囲気の商品が多数並ぶ。


 値札を見ると手頃な価格帯が維持されている感じだ。


 冒険者が使うとなると消耗が激しいので、ある程度安価で新調しやすい方がいい。


 そういうことも考えられているのかもしれない。


 陳列してある品々を見ていると、色々想像できて面白いな。


 店内を見て回っていると、店員さんが笑顔で近づいてきた。


「いらっしゃい、何をお探しかな」


「そうですね、野営に使える物と、家事に使える物を探しています」


 道具の見た目から用途が分からないので、正直に答える。


「ということは冒険者かい?」


「はい。何か役立つものってありますか?」


「う〜ん、一般的なのは火付けの魔道具とか携帯照明かな。後は水を作り出す水筒、携帯コンロ、見た目以上に入る収納鞄、他はテントや小型時計ってところかな。うちでは扱ってないけど、折りたたみの椅子や台なんてのもお勧めだね」


 携帯照明は持っている。火付けの魔道具と水筒は生活魔法があるから必要ない。


 携帯コンロは料理に使えそうだから欲しいな。収納鞄っていうのも気になるな。


「この二つはどういったものなんですか?」


 携帯コンロと収納鞄を指差して尋ねる。


「ふふ、中々お目が高い。携帯コンロはその名のとおり野外で使えるコンロさ。かまどを作って薪をくべなくていいから、灰が出ない。火力も調節可能。ただし、高火力状態を維持すると魔石の消耗が激しいけどね。収納鞄は見た目の二倍から十倍位の荷物が入る魔法の鞄さ。価格が高いものほど大量に入るよ。そこそこ高級品なんで、稼げるようになった冒険者が持つのがステータスみたいな感じがあるね」


 説明を聞くと、どちらも使い勝手が良さそうだ。


 ちょっと欲しいぞ。


「二つとも欲しいな……。収納鞄も魔石を使うんですか?」


「そうさ。魔力が切れるとその場に中身をぶちまけるから、予備の魔石を持っておくことをお勧めするよ。大体見た目の二倍くらいの大きさが収容できる鞄なら、中規模の魔石で一年持つ。収納容量が大きくなるほど魔石の消耗も激しくなるから気をつけて。うちで扱ってる魔道具は目盛りが付いていて、あとどのくらいで魔力が切れるかが分かるよ。ギリギリまで魔石を使うことが出来るから経済的でお勧めだ」


「ほうほう、収納容量が大きければいいってわけじゃないんだな」


 大量に入る分、エネルギーの消耗も激しい。


 予備の魔石を充分に持っておけば問題ないが、目一杯詰め込まずに使うのは損な気もする。


「まあ、超がつくほどの高級品なら、大容量で何年も持つようなものもあるにはあるよ。その場合、使用する魔石もかなりの大きさのものが必要になるから、維持費もお高くなるけどね」


「なるほど。そういうのはきっと、商人が使っていたりするんでしょうね」


 いわゆる業務用的な感じかな。


「商人で収納鞄を使うのは稀だね。収納鞄自体がいい値段になるから雑に扱えないし、魔石とかの維持費も馬鹿にならないからねぇ。高級品を扱っている人くらいじゃないかな」


 と、思ったら違うようだ。


 輸送費もきっちり削減してこその商人ということなんだろう。


「へぇ、そういうものなんですね。じゃあ、この収納鞄を三つと、携帯コンロを二つ頂けますか」


 収納鞄は肩かけ鞄タイプを購入しておく。


 携帯コンロは同時進行で料理する事を考えて二つ買っておく。


 料理なんて煮るのと焼くくらいしかできないけど……。


「おお、景気が良いね〜。ちなみにテントは持っているかい?」


「いえ、周囲の様子が見えなくなるから、使ったことがないですね」


 身を隠せる洞窟なんかがあればそこを使うけど、外で寝るときは基本的に野宿だ。


 ちょっと寒いけど、周囲の様子がわかった方が安全だしね。


「やっぱり知らなかったようだね。このテントも魔道具なんだよ。つまり、色々な機能が付いてるって寸法さ」


「う〜ん、いくら便利な機能がついていてもなぁ……」


 きっと冬は暖かく、夏は涼しいとかだろう。


 過ごし易いのはポイントだと思うけど、冒険者が利用するにはプラスに働きにくいよな。


 結局重要になってくるのはモンスター対策なんだよね。


「チッチッチ、分かってないようだね。このテントに入ると、匂いと温度の外部への流出をある程度遮断するんだ。しかも表面が変化して周囲の景色に溶け込む」


「おお! そういう感じなのか」


 得意げに語る店員さんの説明を聞き、それは使えそうだと身を乗り出す。


 モンスターに察知されにくい機能というわけか。


 これはいいかもしれない。俄然興味が湧いてくる。


「ふふ、食いついてきたね。極めつけは窓があることなんだよ。この部分の布は特殊で、外部からは見えず、内部からは外の景色が薄っすらと見えるんだ」


 テントはそれぞれの面ごとに窓枠がついているように布の色が違っている部分があった。


 それはデザインではなく、実際に窓として機能する。


 しかもマジックミラーのように、外からは中の様子が見えないというオマケつき。


 これは……。


「買います!」


 即決。すごく欲しいと思ってしまった。


 店員さんが商売上手なのか、商品の性能が良かったのか、それは使ってみないとわからない。


 つまり、買うしかないってことだ。



「毎度あり〜」


「く、つい買ってしまった……。ん? あんな物まで売ってるんだ」


 お金を払ってテントを受け取っていると、カウンターの奥に飾ってあるものに目が留まる。



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