75 とんでもない相手と再会……!?
「え、シモーヌさん?」
「捜しましたよ、まるもっちーさん。あ、ミミちゃんも、こんにちは」
『こんにちは!』
と、ミミに手を振りつつ挨拶してくれる。
「どうしてこの街に?」
「実はまるもっちーさんにお願いがあって後を追ってきたんです。結界装甲陸船はチケットがなくて乗れなかったから、結構無茶したんですよ?」
「そ、それはお疲れ様です。で、俺に何か用ですか?」
「まるもっちーさんはシプレの街へ向かわれるんですよね?」
シモーヌさんはずずいと俺に顔を近づけ、尋ねてきた。
「ええ、ここで買い物を済ませたら、そのまま向かう予定です」
「私も連れて行って欲しいんです。実は、シプレの街には姉がいまして。無事なことは確認が取れているんですが、心配で」
「なるほど。でも、危ないですよ」
道中何が起こるか分からないし、お勧めはできない。
「分かっています。それでもお願いしたいんです!」
シモーヌさんはウサ耳をピンと立て、真剣な表情でそう言った。
よっぽどお姉さんが心配なんだな。
「危険と判断した場合、引き返しますけど、それでも構いませんか?」
どうしようもなかったら諦める予定だと告げる。
無理をして他の冒険者に救助されるようなことになれば本末転倒だからね。
「それなら諦めもつきます。その時は街道が修復されてから、改めて向かいます」
「ギルドの仕事は大丈夫なんですか?」
「休暇と仕事、半々の扱いになっています。タマリの街のギルドとしても、街道とシプレの街の細かい状態を把握しておきたいので」
「分かりました。一緒に行きましょう」
俺は頷くと、手を差し出した。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
『一緒に冒険だね!』
シモーヌさんと握手を交わし、ミミとも握手をしてもらう。
三人パーティーの結成だ。
結束の雰囲気が高まったところで、シモーヌさんが思い出したかのように聞いてきた。
「ところで、まるもっちーさんはなんで、覗き見なんてしていたんですか」
「あ〜、実は……」
と、高そうな店なので入るのをためらっていたことを説明する。
「ああ〜……、そういうことだったんですね。確かにこのお店は品質の良い品を扱っていますが、ちょっと高価になりますね。値段に見合った物ではあるんですけどね……」
「なるほど。ちなみに、この店のことは分かります?」
ついでとばかりにジョゼさんから貰ったメモを見せる。
シモーヌさんが詳しそうだったので、つい聞いてしまった。
「よくこんな店を知っていますね。ここは別名、魔窟と呼ばれる店で、街にいながら宝探しの気分が味わえるという、玄人向けのお店です。鉄級の冒険者が当たりを見つけられるお店ではありませんね」
「そんな感じでした……」
店の中を思い出し、呟く。
俺には陳列(?)されている品の良し悪しが全く分からなかった。
「何か欲しい物があるんですか?」
「欲しい物というより、シプレの街へ向かう準備ですね。大体は買ったと思うんですが、店で商品を見ると気付くこともあるので」
「それでしたら、あちらの店がいいですよ。冒険者用の品揃えに特化したお店です」
シモーヌさんが説明しながら指差したのは、件の高級店の向かいにある店だった。
「おお、それはいいですね」
冒険者用の店なら、何か役立つものがあるかもしれない。
「準備は大切です。ゆっくり見て来てください。……そうなると、出発は明日以降ですね」
「確かに。もうすぐ夕方ですから、出発するなら明日の方がいいか」
「それなら、明日シプレの街へ通じる西門の前で待ち合わせしましょう」
「分かりました。それじゃあ時間は……」
シモーヌさんと明日の予定を決め、一旦別れる。
店の中まで付いてきてもらうのは悪いし、それぞれ自由に行動した方がいい。
というわけで、俺は教えてもらった店へ入ってみることにした。
「こんにちは〜。おお〜……、確かに実用的な品揃えって雰囲気だな」
店内にずらりと並ぶ不思議な品々。
タマリの街では見かけなかった物ばかりだ。




