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73 街に着くもとんでもない事態に……!


「はぁ……、魔力量や強さからして、かなりの逸材だったのに、惜しいわ。こんな引きこもりの子供に教えられたんじゃあ、伸びるものも伸びないもの……」


「なんだとぉおおおお! 私とお前はタメ歳だ! 子供ではない!」


「はいはい、よしよし」


「やめんか! こうしてくれるわ!」


 ヴィヴィアンさんがジョゼさんの頭を撫で、ジョゼさんがヴィヴィアンさんの胸に角で頭突きをかます。数分前に見た光景の再来だ。


「また始まってしまった……」


 二人の小競り合いを眺めていると、ミミが楽しそうに飛び跳ねだす。


『ぴょんぴょん!』


 どうやらジョゼさんの頭突きに触発されたようだ。


 その後、運行を再開した陸船は無事、終点であるミルティユの街に到着する。


 トラブルはビッグホーンライノの一件のみ。非常に快適な船旅であった。


「で、君はどこへ向かっているんだい?」


「シプレの街ですね」


 陸船を下りたところで、ジョゼさんに尋ねられ、目的地を答える。


「あそこはブラックドラゴンの被害を受けて、大変なことになっていると聞く。定期便も運行を休止しているぞ?」


「はい、ここからは徒歩で向かいます」


 もともとタマリの街から走って行くつもりだったのだ。


 それをエドモンさんが気を利かせてチケットを手配してくれていたため、結界装甲陸船を利用した。


 ここからは元の予定に戻るだけである。


「いや、遠いから! 街のおつかいじゃないんだぞ!?」


 ジョゼさんに、間髪いれずに突っ込まれてしまう。


「そうよ。馬車を借りたらどうかしら」


「ヴィヴィアン、道が破損している恐れがあるから、断られると思うぞ」


「ああ……、そこまで考えていなかったわね」


「となると、結局……」


 ヴィヴィアンさんとジョゼさんが二人の間の中で会話を完結させていく。


「徒歩です」


 そして、俺が締めに答える。


「そ、そうなるのか。まあ、君の強さなら何の問題もないと思うが、準備だけはしっかりとしておいたほうがいいと思う」


「そうね、何か必要な物はあるかしら?」


「……うーん、一応タマリの街で準備したので、特にないかも」


 ジョゼさんとヴィヴィアンさんに準備について問われるも、抜かりはない。


 買い物は済ませてあるし、今まで陸船に乗っていたので、物資の消費もない。


 ベストな状態といえるだろう。


 などと考えていると、二人がずずいと寄って包囲してきた。


「ふむ、事前の準備を怠らないのは良いことだ」


「シプレの街まで徒歩で向かうなら、かなりの日数がかかるわ。だから、念のためにもう一度お店を見て回ることを勧めるわ」


「そうだぞ。後で足りないと分かっても、引きかえすのにも時間がかかるからな」


 二人にきっちり周囲を固められた状態で、説得されてしまう。


 心配されているのは嬉しいけど、圧が怖い。


「そ、それもそうか。じゃあ、ちょっと買い物してきます」


「ここの商業区は大きいぞ。急ぎでないならゆっくり見て回るといい。ちなみに、この店は私もよく利用するお気に入りで、お勧めだぞ」


 と、ジョゼさんが地図を描いたメモを渡してくる。


「この街は、錬金術師の街と言われるだけあって、魔道具も豊富なのよ。ちなみに、この店は、ジョゼが好きな珍品展示場と違って、ちゃんとした物があるから行ってみなさい」


 と、ヴィヴィアンさんが同じくメモを渡してくる。


 そして、

「なんだとぉおおお!」

「なにかしらぁあああ!」

 睨み合う。


 ――ここまでワンセットなのかな。


「あ、ありがとうございます」


 俺は二人の言い合いをスルーし、お礼を言う。よし、大分慣れてきたぞ。


 しばらく口論を見守り、俺とミミも混ざってワチャワチャしたあと、お別れの挨拶となる。


「それでは我々は行くとするよ。助手の件、楽しみにしている」


「また会いましょう。ジョゼに満足できなかったら、いつでも私の下へいらっしゃい」


「色々ありがとうございました。また、会いましょう!」


『またねー!』


 俺とミミは大きく手を振って一礼すると、その場を後にした。


 それじゃあ、お買い物に行ってみますか。


 何か珍しいものでもあるかな。



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