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7 壮絶! 城からの脱出……!

 

「分かった。今は逃げさせてもらうよ」


 迷ったが、ここに居てできることは少ない。


 強がって居残っても、結局二人の役に立つことはできない。むしろ邪魔になってしまう。


 無駄な気をつかわせてしまうだけだ。


 囮に使うというのも、使う用途が見当たらない俺を無理矢理利用しようとしたがために出た案で、ぶっちゃけやってもやらなくても、どちらでもいい話だ。


 そんなもの、何にでも代用が利く。どうしても俺がやる必要は無い。


 なら俺は、自分のために生き残る選択肢を選ばせてもらう。


 生き残れば、後々何か役に立てることがあるかもしれない。


 だから今は逃げよう。


 俺は「ありがとう。君らも危険だと思ったら、すぐ逃げてくれ」と、二人と固い握手を交わす。


 手はもちもちホコホコで柔らかいが、思いは固いのだ。


「大丈夫だって」


「討伐が終わったら、皆で元の世界に帰りましょう」


 鷹村君が照れくさそうに鼻をこすり、富士原さんが笑顔で手を振る。


「それでは私と一緒に城の外へ向かいましょう。外壁の外へ案内します」


 俺はそう言ったルイーズさんの案内の下、城にある非常時の脱出通路を利用し、一気に城を脱出。城下町も抜け、街を囲う外壁の外へと到着した。


 鷹村君と富士原さんは、客間に残ってアリバイ作りをしてくれることとなったので、城の外へはルイーズさんと二人で来た。


「これを持っていってください。金貨が五十枚入っています。それと水と非常食になります」


 ルイーズさんが革袋を二つと大き目の水筒を三つ渡してくる。


 受け取った俺は、その全てをアイテムボックスへと収納。うん、便利だ。


「本来なら護衛の一人も付けるべきなのでしょうが、貴方を逃がすことに加担したとなれば地位を剥奪され、投獄されてしまうかもしれません。申し訳ありませんが、このお金でなんとか凌いでください」


「わ、わかりました。でもそれなら、俺を逃がしたルイーズさんは大丈夫なんですか?」


「ええ、大丈夫です。勇者様方が色々と工作してくださっています。うまくいけば、まるもっちー殿が囮にされることに勘付いて、一人で逃げ出したと判断されるはずです」


「それなら良かった。お金、大事に使わせてもらいます」


「まるもっちー殿には本当に申し訳ないことをしてしまいました。私の腕が至らないばかりに間違って召喚してしまった挙句、そのような体に……。更には囮に使われるなど……。本当に、本当に……」


 うつむくルイーズさんは言葉を詰まらせ、目に涙を溜めていた。


「ルイーズさんは国を守ろうと必死だった。俺を召喚してしまったのも、この体になってしまったのも、わざとじゃない。分かっています。そして今は自分が罪に問われる危険を冒しながらも、俺を逃がそうとしてくれている。ルイーズさん、ありがとうございます」


 色々なことはあったが、それらは全て事故でしかない。


 気に病むことなど何もない。


 ルイーズさんが謝ることなどなく、むしろこちらが礼を言うべきだと思った俺は、素直にそう告げた。


「まるもっちー殿……」


「さあ、バレない内に早く戻ってください。俺は大丈夫ですから」


「……まるもっちー殿、この方角へ向かって下さい。数日進めば大きな街に着くはずです。名はタマリ。そこで潜伏して時間を稼いでください。その間に何とかブラックドラゴンたちを討伐し、迎えに行きます」


「タマリの街ですね、分かりました。それじゃあ!」


「どうか、お気をつけて!」


 ルイーズさんが指差す方向を確認した俺は、軽く手を振ると駆け足でその場を離れた。


 駆けて行く中、ルイーズさんはずっと俺の背を見送ってくれていた。


 なんとしても逃げ延び、力をつける。


 皆を助けるために。


 秘めた思いを胸に、俺は走った。


 が、息切れして、すぐ歩くことになってしまった。


 能力値が二桁で、この巨体を動かすのは想像以上に辛かった。


 餅の密度をあなどっていた。……重いんだって。


 関節があるなら、膝とか痛めそう。


 ――ルイーズさんと別れ、王都を脱出して三日。


 俺はあることが気になり始めていた。それが何かといえば……。




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