64 特技発覚! その技とは……!?
多分、あれが腕時計なんだろう。
ぬいぐるみは手前にあったのでなんとか引っ張り出せた。
だが、腕時計の位置は遠すぎる。
さすがにミミでもあそこまでは入れない。参ったな。
「だろ? 一度手が届いたのだが、逆に奥へ押してしまってね。お手上げさ」
「かなり細い物じゃないと奥まで届かないですね……」
『マスター、まかせて!』
「おお、何か思いついたのかな」
『ちょっと行って来るね』
そう言うと、ミミは俺の目の前で縮んでみせ、隙間に入り込む。
そういえばミミは縮めるんだった。
最近、小さくなってもらうことがなくなっていたから、すっかり忘れていたぞ。
しばらくすると腕時計を抱えて隙間から帰還し、ジョゼさんのところへ駆け寄った。
『はい、どうぞ』
「あ、ありがとう! ミミ君といったね。君はかわいらしいだけでなく、とても優れた従魔だ」
「はい。うちの自慢の子です」
『えへへ……』
照れるミミ。
大活躍したんだから、これくらい褒められて当然である。
「腕時計をありがとう。君たちには助けられてばかりだな」
再度お礼を言ってくるジョゼさん。
今日はぬいぐるみで顔を隠していない。ぬいぐるみは顎下で止まっていた。
本人に会うのはこれで二度目だし、ちょっと慣れてきたのかな?
などと想像していると、ジョゼさんが険しい表情になって目を細める。
「……んん? 前会った時は緊張していて分からなかったが、君たち、強いね?」
「分かるんですか?」
この人は一体何者なんだ……。と、大げさに思うほどのことでもない。
経験を積んだ人には割りとあっさり気付かれるんだろう。
エドモンさんたちにもバレたしね。
ジョゼさんの見た目は子供のようだが、きっと実力者なのだ。
「まあ、これでも錬金術師の端くれだからね。人を見る目には多少の自信はあるんだよ」
「へぇ、錬金術師だったんですか……」
『子どもなのに、凄いね!』
「何だその目は! 私は成人しているぞ!」
小さいのに凄いな、とか心の中で思っていたのがまずかったのか表情を読まれてしまう。
「え、そうなんですか? どうりで言葉遣いが子供っぽくないわけだ」
「うむ。分かればよろしい」
体は小さいが雰囲気に子供っぽさはない。
成長しても身長が伸びない種族なんですか、と尋ねたら「これから伸びるんだ!」と返された。
……ちょっと気まずい空気になったので話題を変えよう。
「錬金術って凄そうですね。属性魔法なんですか?」
「いや、違うな。どちらかというと学問に近いな」
「へぇ、そうなんですか」
壷に素材をぶち込んで、かき混ぜたりする感じだろうか。
意外とイメージしづらい。どうもピンとこないな。
「む、リアクションが薄いな」
「すいません。田舎の出なもので、初めて聞いたんです」
「魔法陣を使った特殊魔法、魔法の付与と説明した方がいいかな」
「おお、それなら分かります」
属性魔法とはまた別の特殊な魔法を使うみたいだ。
何かひとつのことを指す言葉ではなく、色々なことの総称なのか。
「分かってくれたか。魔法と関わりの深い学問。それが錬金術だ」
「その錬金術を操るのが、ジョゼさんなんですね。ちなみにジョゼさんは、その人が持つ魔法の属性を調べる方法って知っていますか?」
錬金術が魔法に関する学問というくらいなら色々なことを知っていそうだし、属性の判別方法についても何か分かるかもしれない。そう思って尋ねた。
俺とミミの属性、まだ分かってないんだよね。
「もちろんだよ。錬金術を修めた身としては、当然のことだ」
「おお! あの、俺とミミの属性を調べてもらうことってできますか? お金が必要なら払いますんでお願いします」
「うん、腕時計を拾ってくれたお礼に見てあげよう。どこか落ち着ける場所へ移動しようか」
「ありがとうございます」
『ありがとう!』
俺とミミは快諾してくれたジョゼさんにお礼を言った。
属性を調べるには少し時間がかかるらしく、座れる場所が適しているとのこと。
というわけで、休憩スペースへと移動となった。




