63 怪奇! 謎のお尻振り現る……!
結界装甲陸船に乗って数日経ったある日。
船内をブラブラと歩いていると、棚と壁の隙間に身体をねじこんでいる人を見かけた。
無理やり身体を入れているせいか、前にも後ろにも進まなくなっているような……。
悶えて、激しくお尻を振っている。
「……何やってるんだ、あの人」
『お尻フリフリ〜♪』
ミミが真似してお尻を振って踊る。
「出られないのかな」
『大丈夫なの? 引っ張る?』
俺が手を貸そうかと近づいた瞬間、自力でスポンッと隙間から身体を抜いた。
「あの、大丈夫ですか?」
近づいて声をかける。
「あっ! ま……まる……もっちー……」
そこで言葉が尽き、顔が真っ赤になる。
隙間に体を突っ込んでいたのはジョゼさんだった。
今日はぬいぐるみを持っていない。
そのせいで途中で緊張し、話せなくなってしまっていた。
が、必死な表情で口を開閉し、何かを伝えようとしている。
もしかして、あの隙間に何かあるのかな、と覗き込んでみる。
「あ、挟まってる……」
隙間の奥にクマのぬいぐるみが挟まっているのが見えた。
どうやら奥に進んではまってしまい、動けなくなってしまったようだ。
隙間は人の腕が入るほどの幅ではある。だが、胴を入れるには少し狭い。
そのため、腕を目一杯入れて、何とかしようとしていたのだ。
謎の行動の答えが判明し、なるほどと納得する。
何とかしてあげたいが、俺だと体が大きくて隙間に体が入らないな。
「何か道具を借りてきた方がいいかもしれませんね。……あ」
箒でも借りられないかなと考えていると、ナイスなアイデアを思いつく。
「ミミ、ちょっとあの隙間に入って、ぬいぐるみを取ってきてくれないかな」
『分かった! 行ってくる!』
言うが否や、トトッと隙間に入り込む。
『じゃーん! 取れました〜』
そして瞬く間に、成果を携えて帰還を果たすミミ。
「偉いぞ、ミミ。助かったよ」
『エヘヘ……』
お礼を言い、頭を撫でる。
そして、ミミを抱え上げ、ジョゼさんの方へ向き直る。
「上手くいきましたよ」
『どうぞ〜』
と、ミミからぬいぐるみを渡してもらう。
俺の手柄じゃないからね。
「あ、ありがとう! もう駄目かと思ったよ」
「いえいえ、お礼はミミに」
「ありがとう、小さな従魔さん」
ジョゼさんとミミが握手を交わす。
『よかったね』
嬉しそうにするジョゼさんに、ニッコリ笑顔で応えるミミ。
無事問題解決である。
「でも、なんであんな隙間にぬいぐるみを入れていたんですか?」
と、気になったことを聞いてみる。
あんな狭いところに入ったら出られなくなるの当然だ。
「実はこの隙間に腕時計を落としてしまってね。どうにか拾えないかと中へ潜り込んだらこのざまさ」
ぬいぐるみとそれを抱えるジョゼさんが同時にがっかりとした表情になる。
操作しているというより、リンクしているよな感じで息ピッタリだな。
話を聞き、改めて隙間を覗き込んでみる。
「ああ〜……、これは……」
すると、奥の奥。光の届かない最奥にキラリと光る小さな物が見えた。




