62 壮絶! ある人物の正体が明らかに……!?
「……ふむ、凄く気前のいい人だな。初乗りは話題になっていたから、チケット予約開始日に購入希望者が殺到して、大混乱になったんだ。結果、抽選になったんだよ」
「なんと……」
ジョゼさんの説明に、この船の人気振りが窺える。
ブラックドラゴンの騒動があったし、明るい話題に乏しかったから、利用客が殺到したのかな。
「折角貰ったんだから、しっかりと楽しんでいきなさい」
「そうですね。堪能していくことにします」
ヴィヴィアンさんの言葉に頷く。
目一杯楽しんでおこう。
「うむ、楽しむといい。私は仕事だがな……」
「貴方は人見知りをもう少しなんとかしなさい」
「ぜ、善処する」
ヴィヴィアンさんがお説教モードに移行し、ジョゼさんがうな垂れる。
「あの、さっきから気になっていたんですけど、ぬいぐるみの後ろの方がジョゼさんでいいんですよね? この間お会いした時はぬいぐるみだけだったので……」
「ええ、そうよ。ほら、それ取って挨拶なさい」
頷いたヴィヴィアンさんがクマのぬいぐるみを取り上げる。
「あ、返して!」
するとゴスロリファッションに身を包んだ小柄な女性と目が合った。
途端、熱々の風呂にでも入ったかのようにジョゼさんの顔が真っ赤になり頭頂部から湯気が立つ。
「挨拶したら返すから。ほら、早く」
「ジョ、ジョゼ……で……しゅ……。こん……に……ち……」
我慢の限界がきたのか、ジョゼさんは挨拶を途中で諦め、ヴィヴィアンさんからぬいぐるみをぶんどる。そして自分の前に置き、顔を隠した。
「ジョゼだ。よろしく頼む」
「まあ、貴方にしては頑張ったわ」
ヴィヴィアンさんは軽くため息をつくと、肩をすくめた。
どうやらジョゼさんは相当恥かしがり屋のようだった。
「普段は部屋にこもって全く外に出ないのよ。そのせいで話すのが苦手ってわけ。今日はまるもっちー君とご飯食べるって言ったから、頑張って出てきたのよ」
「そうだったんですね」
「ご馳走するって約束だからな」
ぬいぐるみ越しに話すジョゼさん。
「仕事もぬいぐるみを遠隔操作してやるものだから、私がぬいぐるみ好きって誤解されるのよね……」
「それは別に誤解ではないだろう。事実だ」
「ああ〜、もう! それはそうかもしれないけど、知られたくないのよ!」
「なぜだ? 私はかわいいと思うぞ」
「ぐぬぅ……。ちょっと、そのぬいぐるみを寄越しなさい!」
「や、やめるんだ! 放せ!」
『二人は仲良しさんなんだね!』
「そうみたいだね」
ミミの言葉に深く頷く。この二人、なかなかいいコンビだな。




