61 会食! 驚愕の事実発覚……!
翌日の昼。偶然再会したヴィヴィアンさんに昼食に誘われた。
船内にあるレストラン向かい、そこで食事となった。
「まるもっちー君、この船の乗り心地はどうかしら?」
優雅にグラスを傾けながらヴィヴィアンさんが聞いてくる。
しかし、俺はヴィヴィアンさんの隣に座る人が気になって、少し上の空気味だ。
いかん、いかん。集中しないと。船の乗り心地を聞かれたんだっけ。
「良いですね。全然揺れないし、速度も馬車以上。個室もあるから、凄く快適です」
何日か乗ってみて、改めてのこの結界装甲陸船の凄さが分かった。
舗装してある街道を走っているとはいえ、揺れを感じない。
これなら乗り物酔いしやすい人でも安心だろう。
速度は一定に保たれ、馬車以上。部屋は広さも充分で、ストレスを感じない。
長距離の移動には最適の乗り物だと実感する。
「そうでしょう、そうでしょう。こうやって利用者から生で喜びの声を聞くと、苦労が報われるわ」
俺の言葉を聞いたヴィヴィアンさんは、胸をそらしてドヤ顔。
苦労が報われると言っているところからして、この結界装甲陸船の関係者なのだろうか。
「……この結界装甲陸船は、ヴィヴィが設計したんだ」
と、ジョゼさん? が俺の疑問を解決してくれる。
――さっきから気になっていたこと。
それはヴィヴィアンさんの隣に座る女性だ。
その人はとても小柄で、ジョゼさん(クマのぬいぐるみ)を膝の上に乗せている。
そのせいで顔が隠れて表情が分からない。
額にはタンコブのような小さな角が二つ付いているのがチラチラと見える。
髪の色はクマのぬいぐるみと同様のピンクで、ボリューミーなツインテールとなっていた。
あの人がぬいぐるみを操っていたのだろうか。
「おお! そうだったんですか。外観は豪華客船みたいですね」
ジョゼさんのことを気にしつつも、ヴィヴィアンさんの得意顔の理由が分かって深く頷く。
しかし、これほどのものを設計できるなんて、すごい才能の持ち主なんだな。
「ええ、豪華客船をイメージして設計したの。ここまで大型化に成功したのはこの船が初めてなのよ。我ながら傑作といえる仕上がりだわ」
「船体の上部に帆が付いていましたけど、風を受けて走るんですか?」
この結界装甲陸船で一番不思議だったのは帆だ。
帆船みたいに風を利用して進んでいるのだろうか。
「いいえ、あれは大気中の魔力を吸収する装置よ。基本の動力は魔石によるものだけど、その消耗を補うための装置ね」
そういえば、タマリの街でも馬車に混じってヨットみたいな車を見かけたっけ。
動力が二つあるわけじゃないけど、イメージとしてはハイブリット車みたいなものかな。
「……今回が出発式でお客を乗せての初運転なんだ。それで視察と点検を兼ねて私たちが同乗しているというわけだ」
と、明らかにぬいぐるみの後ろから声が聞こえるも、その声は以前聞いたジョゼさんと同一のもの。やっぱり、そういうことなのかな。
ちょっと小声な上に、ぬいぐるみ越しに話しているから、聞こえづらいぞ。
「そうだったのか。ってことは、これのチケットって結構いい値段なのでは……」
聞けば聞くほどに、乗船券の値段の予想が跳ね上がっていく。
「当然よ? 人気で抽選になったくらいだからね。貴方も当選したんでしょ?」
「いえ、俺は貰ったんです。エドモンさんめ……」
ただの移動手段のチケットかと思ったら、とんでもないものだった。
軽い気持ちで受け取ってしまった。
次に会う機会があれば、しっかりとお礼を言おう。




