60 客室到着! 内装がとんでもないことに……!
辿り着いた部屋は中々に豪華だった。
「おお……、これはいい部屋だ」
『わぁ〜! かっこいいね!』
寝室とリビングの二部屋で、トイレと風呂付き。
『マスター、ベッドは柔らかいよ!』
「ふかふかだなぁ。お、ベランダもあるのか」
『お外が見れるの?』
リビングについた窓からはベランダに出ることが出来た。
ベランダには小さなテーブルと椅子があり、ちょっとしたくつろぎスペースとなっていた。
二人で椅子に座り、外の景色を眺める。
「いい眺めだなあ」
『前に進んでるね!』
風が気持ちいいし、ここで食事をするのもいいかもしれない。
しばらく景色を楽しんだ後は、船内をぶらっと回ってみることにする。
「よし、それじゃあ船の中を見て回ろうか」
『探検だね!』
部屋を出た俺たちは船内見学ツアーへと繰り出した。
この結界装甲陸船、細部まで非常に凝った作りになっていて、見ていて飽きない。
ミミと二人、散歩気分で色々なところをうろうろする。
甲板に出て外を見た後は、近くの休憩スペースへと立ち寄った。
「おお、水槽まであるのか」
『お水が置いてあるね』
休憩スペースには巨大な水槽が飾ってあった。
きっと中には魚でもいるんだろう。
「側に行って見てごらん」
『水を見るの? ッ! お魚さんだ!』
魚を見つけ、水槽に張り付くミミ。
水槽の中を優雅に泳ぐ魚群に目を輝かせ、食い入るように見つめていた。
魚は一センチほどの小さいものであったが、とても色鮮やかだ。
群れとなって泳ぐ姿は花吹雪を連想させる。
「カラフルだな。熱帯魚とかなのかな」
『光る花びらが泳いでるみたいだね!』
「そうだね」
ミミと二人、魚の観賞をしてしばらく過ごす。
その後、部屋で夕食を取り、一日目は終了。
大きなベッドで就寝となった。
翌朝、朝食が届いたので、ベランダで食べることにする。
こぼさないように慎重に運び、着席。
「じゃあ、食べようか」
『いただきまーす』
「いただきます」
メニューは軽く焼いたパン、バター、ベーコンエッグ、スープ、サラダとオーソドックすな感じだ。
パンはふわふわで、軽く手でちぎれる。
適当に小さくしたパンにバターを塗り、ひと口。
ふっくらしたパンに溶けたバターがじんわりと染み、ふんわりした食感と濃厚な味が同時に楽しめる。最高だ。
元いた世界を思い出す味だな。
サラダはさっぱりシャキシャキ。ベーコンエッグはがっつりたんぱく質。
スープをひと口飲めば、「ふう」とほっとひと息。なんとも落ち着く。
視線を前方に落とせば、ミミがナイフとフォークを使ってベーコンエッグを上手に食べていた。
こちらの視線に気付くと『美味しいね』と笑顔を返してくれる。
「そうだね。ご飯は旨いし、眺めも最高だな」
横を向けば、景色が流れていく。
周囲はうっそうとした森が支配し、緑の海を航海しているような気分になる。
ときおり、鳥型のモンスターがこちらへ寄ってくるも、一定距離に近づくと光のバリアが展開され、近づけない。
きっとあれが結界なのだろう。よくできた仕組みだ。
『マスター、マスター』
「ん、どうしたの?」
ミミに呼ばれ、視線を戻す。
『ミミね、お魚さんが見たいの』
「昨日見つけた水槽か。気に入ったみたいだね」
昨日船内を探検していたとき、別のフロアの休憩室で巨大な水槽が展示されているのを見つけた。
中には熱帯魚のように鮮やかな色の魚が活けられており、とても綺麗だった。
ミミは色とりどりの魚に心を奪われ、時間も忘れてずっと眺めていたのだ。
どうやら今日もあの魚が見たいようだ。
「いいよ。行こうか」
『やったー!』
結界装甲陸船での旅は長い。
飽きられるより、楽しめるものがあったほうが助かる。




