表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/322

55 巨大! その乗り物の正体はとんでもないものだった……!


 俺の目の前には巨大な船があった。ピカピカの新造船だ。が、船とは違う部分がある。


 一見、帆船のように見えるが、船底には車輪がいくつもついているのだ。


「これが定期便の結界装甲陸船……。ほんとに陸を進む船って感じだな」


『大きーい! マスター、上が見えないよ!』


 と、隣で使役精霊のミミも驚きの声を上げる。


 二人で見上げるも、巨大なせいで上部の構造が見えない。


 きっと、乗客以外に大量の貨物を運ぶからこの大きさなのだろう。


「迫力があるなぁ」


 余りのデカさに、ほう、とため息。


 これに乗ってシプレの街へ向かう。


 向こうは、ブラックドラゴンの被害を受けて大変な状態だと聞く。


 そこへ、大量に手に入ったお肉を持って行くのだ。


 といっても、道が崩れているため、結界装甲陸船で行けるのは途中まで。


 そこから先は、徒歩で向かうことになる。


 まあ、レベル99の俺の足を使えば、それほど苦にはならないはず。


 見込みが甘いかもしれないが、現地に行ってみないとハッキリとしたことは分からない。


 駄目なら引き返せばいいだけだし、気楽に行けばいい。


 俺はエドモンさんたちから頂いたチケットを使って、船内へと乗り込んだ。


「中は客船みたいな感じなんだな」


『お部屋が一杯だね』


 内装は豪華客船を思わせる作りとなっていた。


 床一面に毛足の長い真紅の絨毯が轢かれ、手すりや壁には複雑な彫刻が施されている。


 吹き抜けとなっている部分には巨大なシャンデリアが吊るされ、周囲に煌びやかな雰囲気と明かりを振りまいていた。


 陸地を進むが、外観も内装も船といった方がしっくりくるな。



 そんなことを考えながら、ロビーの受付へ向かい、客室の鍵を受け取る。



「よし、部屋に荷物を置いたら探検に行くか」


『わーい! ミミね、一番上に行ってみたいの』


「いいね、きっと見晴らしがいいだろうな」


『アリサちゃんの家も見えるかな』


 ミミと話しながら、部屋へと向かう。


 しばらく進んでいると、前方の角を曲がった先から泣き声が聞こえてきた。


 なんだろうと、角から顔だけ出して先を覗く。


 先は休憩所となっており、二人の人影が見えた。


 どうやら、泣いている女の子をもう一人がなだめているようだった。


 しかし、なだめている方の人が女の子より小さい。


 小さいからといって子供という印象はないけど、小人的な種族なのだろうか。


「うわぁあああん! ママー!」


「お、落ち着きたまえ。私が一緒に母親を捜すから」


「う゛わぁあああああああん!」


「むぐっ。は、放すんだ。これでは身動きが取れない」


 子供を泣き止ませようとしているが、うまくいっていない。


「む、迷子かな」


『泣いてるよ。大丈夫?』


 会話を聞くと、女の子が母親とはぐれたっぽい。


 そこへもう一人がたまたま出くわし、対応しているようだ。


 だけど、そういったことに慣れていないのか、どうにも頼りない。


 女の子にされるがままになり、抱きしめられて身動きが取れなくなっている。


「ぐ、締まる……。抜け出せない。だ、誰か……助けて」


 女の子に締め上げられ、脱出不能となって助けを求めるって、どれだけ非力なんだ。


「止めに入った方がいいかな……」


『ぎゅ〜ってされてるね』


「大丈夫ですか? ほら、苦しがってるがってるから離してあげて」


 女の子と抱きしめられている人の側へいき、両者へ声をかける。


「うう……、ママ……」


 すると、俺を見上げた女の子が抱きしめていた相手を離した。


 また抱きしめられるとまずいと考えた俺は、素早く解放された人を掴んで背後へと回す。


 あれ? なんか妙に軽いな。


「あ、ありがとう助かったよ」


「いえいえ、これくらいなら何でもないです……よ?」


 返事をしようと振り返り、相手の顔を確認して固まる。


 それはどう見ても、ローブを着たピンクのクマのぬいぐるみだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ