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49 解体を依頼したらとんでもない事態に!


「と、とにかくだ。解体と買い取りの限界量は五十ってところかね。どうだい、ハンス?」


「まあ、そんなところだな。解体だけなら、日数を貰えば全て出来る。ただ、他の冒険者の持ち込み分と並行して作業するから、それなりに時間はかかると思ってくれ。お前の持ち込み分だけ優先してやってたら、他のは全部塩漬けにでもしないといけなくなるからな」


 気を取り直したダイアナさんが、ハンスさんと解体と買い取りの限界量を相談し、俺に教えてくれる。やはり、数が数だけに全部は難しいか。


「買い取った分を捌き切れば、新たに買い足すこともできる。けど、それだけ買うと、この街では過剰供給になるから、買取価格は下がるだろうね」


 と、ダイアナさんが肩をすくめた。


 一応、この街で全てのアックスブルを捌くことはできる。


 といっても数が数だけに、売れば売るほど、買取価格は下がっていく。


 希少価値がなくなっていく上に、この街での肉の供給量が過剰になってしまうためだ。


「まあ、急ぐわけでもないので。余った分はアイテムボックスに入れておきます」


 別にこの街で全てを売る必要は無い。


 タイミングを見て、別の街へ持っていって売るという手もある。


「……アックスブルが二百三十七頭入るっていう、そのアイテムボックスも相当おかしいんだけどね」


 半眼になったダイアナさんが、俺を見つめてくる。


「ダイアナ、まるもっちーは冒険者だ。その辺りは聞くべきじゃないだろう」


「まあ、そうだね。あんまりしつこくして、街に寄り付かなくなられてしまうのが、一番痛いからね」


 エドモンさんの言葉に頷いたダイアナさんが、ため息を吐く。


 これで色々追及されることはなさそうだ。


「それじゃあ、対応可能最大数での解体と買い取りをお願いします」


 話題が途切れたようだったので、解体と買い取りをハンスさんに依頼する。


「分かった。数が多すぎるから、別の倉庫に移動するぞ。付いて来い」


 ハンスさんが俺を手招きする。


 次いで、エドモンさんが別方向へ歩き出した。


「俺はここまでだな。まるもっちー、飯のこと、忘れるなよ?」


「はい、楽しみにしてます」


 エドモンさんは俺の肩を叩いてニヤリと笑うと、帰って行った。


 俺はエドモンさんの背に頭を下げると、ハンスさんの待つ倉庫へ向かう。


 中に入ると、広大なスペースの中心に陣取ったハンスさんとダイアナさんが手招きしていた。


「ひとまず、この辺に三十頭出してくれ。残りは明日以降に捌くから、冷凍庫で出して欲しい」


「分かりました。それじゃあ、いきますよ?」


 俺はアイテムボックスから、アックスブル三十頭を一気に取り出した。


 でんと大きな山が一瞬で完成し、周りにいた作業員が何事かと、近づいてくる。


「お前が嘘をついてないってことは承知していたつもりだったが、こうやって現物を目の前に出されると、やっぱり驚いちまうな……」


「全くだよ……」


 と、口を半開きにしたハンスさんとダイアナさんが、アックスブルの山を見上げる。


「よし、冷凍庫に案内する。残りはそこで頼む」


 俺はハンスさんに連れられて、冷凍庫へ移動。


 残りのアックスブルを引き渡し、再度ダイアナさんと合流する。


「解体には三日くれ。ダイアナ、臨時の手伝いが必要だ。手配してくれ」


「あいよ、任せておきな」


「それじゃあハンスさん、三日後に来ますんで、よろしくお願いします」


 解体の話がまとまり、作業終了が三日後となる。


 今回はかなり特殊なことだし、お金の話はその時になるだろう。


「久々の大仕事だ……。燃えてきたぜ。野郎共! 気合入れるぞ!」


「おおお!」


 ハンスさんが声を張り上げると、倉庫内にいた他の作業員の人たちが、次々に呼応して叫び出す。


 辺りは妙な熱気に包まれていた。


 なんか、大変な騒ぎに発展してしまったな。


「まるもっちー、アンタには話があるから、アタイの部屋に来な」


 俺が周囲の風景に呆気にとられていると、ダイアナさんに呼ばれる。


 頷いた俺は、ダイアナさんと冒険者ギルドへと向かうこととなった。


 職員専用の出入口からギルドへ戻り、階段を上る。


 上の階には行ったことがないな、と思いながら付いて行くと、最上階にある一室へ通された。


 中は応接室らしく、ソファに座れと促される。


 俺が、失礼しますと座ると、ダイアナさんが対面のソファにドカッと腰掛ける。


 その表情は疲れの色が見え、ひと仕事やり終えた感が漂っていた。


「さて、アンタを呼んだのは、色々と用があったからさ」


「何でしょうか?」


「まずは礼を言わせてもらうよ。アックスブルの討伐、感謝する。もし、あれが野放しのままだったら、村の一つや二つは壊滅していたかもしれないからね。進路が変わって街の方に来ていれば、大変なことになっていたよ」


「いえ、全滅は出来すぎでした。多少は逃げられると思っていたのですが、うまくいってよかったです」


 思い返してみると、偶然の要素が重なり狙い以上の結果が出たことで出来たことだ。


 同じことをもう一度やって、同じ結果を出せるかと聞かれると疑問が残る。


「こちらとしては大助かりさ。次に、アンタのランクだ。今、鉄級なんだよね?」


「はい、数日前に登録したばかりなので」


「今回の功績を公にしてもいいなら、一気に銀級まで上げることもできるけど、どうする?」


「う〜ん……、冒険者に成り立ての俺では、判断に迷いますね」


 ランクアップするかと聞かれて、迷いが生じる。


 成り立てほやほやの俺に、そんなことを決めろと言われても、判断材料が少なすぎる。



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