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48 強さがバレてしまい、とんでもないことに……!

 

「……アックスブルだな。間違いないわ」


 俺が出したモンスターの死骸を確認し、間違いないとハンスさんが言う。


 ハンスさんは腕組みしてしばらく考え込んだ後、口を開いた。


「まるもっちー……、こちらとしては、アックスブルを限界まで買い取りたい。アックスブルの肉は旨く、需要が高いからな。しかも、強いモンスターのため、普段それほど出回らない。だから市場に出せば、高値で飛ぶように売れる。つまり、かなりの儲けが期待できる」


「へぇ、肉が旨いんですか」


「凝った調理をしなくても、焼くだけで旨い。味はもちろんのこと、臭みがなくて柔らかい最高の肉だ」


 アックスブルは高級品枠ってことなのか。


 しかも、売れば儲けが確約されていて、別の意味でも美味しいと。


「まあ、そんなわけで、ちょっと待ってろ。ギルドマスターに相談してくる」


「分かりました」


 俺が頷くと、ハンスさんはギルドマスターを呼びに、冒険者ギルドの方へ走って行ってしまった。


 ギルドマスターが来るなら、ついでにアックスブルの大群がいたことも伝えられるし、一石二鳥だ。後はエドモンさんたちが街に着いたら、全て終わったことを報告すれば問題なしである。


 しばらく待っていると、ハンスさんがエドモンさんと燃えるような赤髪の女の人を連れて戻ってきた。


「おい、まるもっちーじゃねえか!」


「あれ、エドモンさん、なんでここに?」


 俺とエドモンさん、共にお互いを確認して驚きあう。


「丁度、アックスブルの話をギルドマスターに報告してたんだよ。そしたらハンスが血相変えて飛び込んで来て、アックスブルの大群を持ち込んできた奴がいるって話に……」


「俺も、報告をしようとしていたところだったんです……」


 俺が素材買取所にいた数分の間に、エドモンさんはギルドマスターと面会していたようだ。


 このタイミングではシモーヌさんとも会えない。完全な入れ違いだ。


「アンタがまるもっちーかい?」


「そうです。よろしくお願いします」


 赤髪の女性に問われ、頭を下げる。


 ここまでの話を総合すると、多分この人がギルドマスター。


「アタイは、この街でギルドマスターやってるダイアナだ。よろしくな」


 ギルドマスターのダイアナさんが簡単に挨拶を済ませ、俺の肩をポンとはたく。


 見るからに強そうな雰囲気があるし、昔は冒険者だったのかな。


 などと考えていると、ダイアナさんが話しかけてくる。


「それで、アンタが持ってきたアックスブルってのは、エドモンが言ってた大群のことなのかい?」


「はい。アックスブルが運良く峡谷に移動したところを、一網打尽にしました」


 ダイアナさんに問われ、その通りだと答える。


 倒した状況も嘘は言っていない。


 できればあんまり追及されたくないな……。


 と、思っているとダイアナさんが俺を穴が空くほど見つめてくる。


 怪しまれているのだろうか。


「……アンタ、相当強いね。アタイじゃ、敵わないかもしれないねぇ。エドモンなら分かるだろ?」


 俺が大量のアックスブルを倒したことを疑っているから、ジッと見つめてくるのかと思ったら、違った。


 何やら、俺の強さについてエドモンさんと話し始める。


「……ぇ? そうか?」


 話を振られたエドモンさんは不意打ちを食らったかのように、しどろもどろとなる。


「おいおい……、しっかりしなよ。うちの稼ぎ頭がそんなこと言ってて、どうするんだい」


「なんだと? おい、まるもっちー、ちょっとこっちに来い」


 ダイアナさんに言われたエドモンさんは表情を変え、俺を呼ぶ。


「え、なんですか」


「いいから。じっくりお前を見させろ」


「はぁ……」


 俺が気のない返事を返す間も、エドモンさんがひたすら凝視してくる。


 上から下までじっくりと見られ、なんともいえない気分だ。


 ダイアナさんに見られ、エドモンさんに見られる。


 一体、何の罰ゲームなんだろうか。


「確かに……。お前、強いな。新人ってことと、緩い顔で筋肉がなさそうなモチモチした体つきをしていたから騙されたぜ……。かなり集中して、注意深く見なければ分からないが、お前は強い。というか…………、むしろ強すぎないか? おかしいだろ、これ」


「アタイもそう思うんだよね……。ちょっと強すぎない? 気配でしか判断してないけど、例えられるものが存在しないわ……」


 エドモンさんが俺は強すぎると言う。


 それにダイアナさんも同意し、二人ともしばらく黙り込む。


 レベル99の弊害がこんな形で現れるとは。


 そういえば、ブラックドラゴンを倒した際に得た称号で能力値に補正が入っているから、レベル99以上に数値が高いのか。


 鑑定の魔道具が国宝なので、そう簡単に正体を知られることはないと思っていた。


 転移失敗者とはバレていないが、見る人が見れば、能力値が高いことは気付かれてしまうようだ。


 しかし俺は単純に火力が高いだけで、実力が伴っていない。


 過大評価を受けてしまいそうで怖いな。正直参った……。


 なんとも気まずい雰囲気がしばらく経過した後、ダイアナさんがハンスさんに尋ねる。


「ハンス、あんたは、まるもっちーのことをどう思う?」


「あ? 俺は最初からこいつは強いと思ってたぜ。なんせ、クリムゾンタイガーを単独かつ一撃で倒して、ここに持ってきやがったからな」


「「はぁ!?」」


 ハンスさんの言葉を聞き、ダイアナさんとエドモンさんが仰天の表情となる。


 ……あのサーベルタイガーもどきって、そんなに強かったんだ。



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