46 倒した数がとんでもないことに……!
『大変だったね。マスター、お疲れ様』
「ミミ、ナイスアシスト。お陰でうまくいったよ、ありがとうね」
終盤でミミがアックスブルを拘束してくれたので、事がスムーズに運んだ。
あんなことまで出来るようになっているなんて驚きだ。
自ら強くなったと言うだけはある。
かわいい上に頼りになるなんて、反則である。
『えへへ……、ミミもマスターのお役に立てて嬉しいよ?』
頭を撫でながらお礼を言うと、ミミが頬を赤らめて俯いてしまう。
「さて……、倒すものも倒したし、後片付けをするか」
俺はアックスブルの死骸を、アイテムボックスへと回収した。
峡谷の両端に設置した大岩もアイテムボックへと回収する。
設置した月見団子はほとんど食べ尽くされていたので、そのまま放置することにした。
「さすがに疲れたな。ちょっと休憩だ」
『うん!』
片づけを終え、大福で一服。
アイテムボックスを確認すればアックスブル×237と、ある。
うん、数がおかしい。
こんな数のモンスターが人里に押し寄せれば、災害より質が悪い。
うまく倒せてよかった。
「それじゃあ、街に戻ろう。色々あったせいで、予定とは大分変わっちゃったな」
『モンスターを一杯倒したね!』
「すごい数だよ。帰って売ったら、幾らになるんだろ……。まあ、行くか」
ラッシュボア十四頭にアックスブル二百三十七頭……。
ラッシュボアは村に四頭おすそわけしたが、それでも数がおかしいことに変わりはない。
このことに関しては、あまり考えない方がいいかもしれないな……。
俺は気持ちを切り替え、帰ることに集中する。
縮んでもらったミミを胸ポケットへ入れ、街へ向けて駆け出した。
元々下山していたため、街にはあっという間に到着した。
「まずは、エドモンさんに知らせないと……」
アックスブルを全滅させたのを、教えて安心させたい。
エドモンさんたちを探しながら、門からギルドへ向かって歩くも、それらしき人影は見当たらない。
そうこうしているうちに、ギルドへ着く。中に入って捜すも見つからない。
「追い越しちゃったか?」
まだ、街に着いていないのだろうか。
受付に行き、シモーヌさんに聞いてみるも、見ていないとのこと。
走っているときに、もう少し周りを見ておくべきだった……。
「これ以上捜し回っていると、入れ違いになるかもしれないしなぁ……」
ひとまずアックスブルの話だけでも、報告しておくかと考えていると、声をかけられる。
声が聞こえた方を見やれば、ギュスターブさんが不安げな表情で立っていた。
「待ってたぜ。案外早かったな。これだけ早いってことは、なかったか?」
俺が個性的外見かつ巨体だったため、ギュスターブさんが俺を発見し、受付まで来てくれたのだ。
エドモンさんはまだ来ていないみたいだし、ギュスターブさんを待たせるのも悪い。
ここは先に自分の依頼を済ませてしまうか。
アックスブルの件は、どう考えても説明に時間が掛かる。
一旦、依頼を片付けてから、続きをした方がいいだろう。
「いえ、バッチリです。シモーヌさん、依頼成功の確認をお願いします」
「おお! 残ってたか! やったぜ!」
「死骸運搬の依頼でしたね。それでは素材買取所で確認作業を」
「よーし! 行こう行こう! 俺のトレントたちを見よう!」
「ちょ、ギュスターブさん!」
こちらの返答を聞いたギュスターブさんは声を弾ませ、素材買取所へ早足で歩き始めた。
俺はギュスターブさんに腕を引かれ、強制連行。
その後ろから、「ちょっと、待ってください。私も同行します」と受付を出たシモーヌさんが続く。三人一列となった俺たちは、素材買取所へ向かった。
「おう、まるもっちーじゃねえか、今日はどうした」
「死骸運搬の依頼を達成したので、依頼主とギルド職員の方に同行してもらって、確認と引渡しの手続きです」
素材買取所に到着し、ハンスさんに事情を説明する。
「分かった。モンスターの種類と数は?」
「トレント十体です」
「なら、奥のスペースを使うか。付いて来な」
と言われ、ぞろぞろと皆でハンスさんの後に付いて行く。
いつも使っている場所もかなり広いが、案内された場所は倉庫に近かった。
これなら、かなりの数を置いても問題無さそうだ。
俺は、アイテムボックスから回収したトレントの死骸十体を順に出して置いて行く。
その様子をギュスターブさんとシモーヌさんが見守り、ハンスさんが一体ずつ検分していく。
「間違いない。数も問題ない」
トレントの死骸についた傷跡などから、自分たちが倒したものだと確信したギュスターブさんが呟く。
「それでは依頼達成ということで、問題ありませんね?」
「ああ、よろしく頼む」
シモーヌさんの確認に、ギュスターブさんが頷く。
どうやら無事依頼達成となりそうだ。




