414 準備は万端。目指すは新天地!
宿に待機してくれと言われたが、しばらくは連絡も来ないだろうし、今のうちにこっちの準備を整えていくことにする。
「それじゃあまずは樽を作っていくか」
とにかく水を入れるものが大量に必要になる。
といっても、あまり巨大なものに水を溜めると重くなって管理しづらい。
そうなると樽くらいが丁度いいと思った。
『樽?』
「うん、木の入れ物だよ。そこに水を入れるんだ。いつもモンスターの血を入れているやつだね」
と、ミミに容器の説明をし、イメージを膨らませてもらう。
『木ならミミが出せるよ!』
「おお。じゃあ、任せていい?」
キンモクセイみたいな感じで、出せるのかな。
これは助かるぞ。
『うん! それじゃあ……、よっこいしょーっ!』
ミミが両手をかざし、力をこめる。
すると地面から木が大量に生えた。
しかも密集した状態で生えたので、木の壁ができたかのような状態になってしまった。
地中から生えた木は自ら根を抜き、その場に倒れていく。
『出来たよ!』
ミミがにぱっと笑顔で振り返る。
「ありがとう。これなら、わざわざ木を集めにいかなくても材料が揃うよ」
『やったね!』
「それじゃあ、この木を使って樽を作りますか」
木の側に魔石を置いた後、創造補助スキルを使って樽のレシピを検索し、錬金術を発動。
完成した魔法陣に魔力を通せば、大量の樽が姿を現した。
「よし、完成だ。ちゃんと出来てるな」
完成した樽の一つを持ち上げ、中を覗く。
とても綺麗な完成度だ。これなら水漏れの心配もない。
「早速水を溜めていくか。魔力製水っと」
俺は生活魔法で樽に水を注ぎこんだ。
作り出した水の勢いは凄く、あっという間に一つの樽が一杯になる。
『ミミもやってみたいの!』
「じゃあ、お願いしようかな。出来上がった全部の樽に水を入れていくんだ」
『分かったの!』
というわけで、二人で樽に水を注いでいく。
二人掛かりで取り組んだせいか、あっというまに全ての樽が水で一杯になった。
「こんなものでいいのかな……? どのくらいの数量を作ればいいか分からないから、もうワンセット作るか。ミミ、もう一回木を出してもらってもいい?」
『いいよ!』
ミミに快諾を得た俺は、再度樽を作り、水を溜めた。
どのくらい必要なのか分からず不安になって作業を繰り返し、作り出した水入りの樽は百。
ギルドでも用意しているそうだし、とりあえずこれだけあればいいか。
足りなければ、後は現地で生活魔法を使っていこう。
準備を終えた俺たちは月の雫亭へ帰り、ギルドから連絡が来るのを待った。
しかし、その日は何の音沙汰もなく、連絡が来たのは二日後だった。
連絡に来たエラさんに連れられ、ギルドへ向かう。
そこには水が詰まった大量の樽と一緒に、ギルドマスターが待ち構えていた。
「待たせたな。水の準備が整った。受け取ってくれ」
「確かに」
ギルドマスターから水が入った樽を百受け取る。
さすがに百個ともなると持ち運ぶことも困難なため、その場で全てアイテムボックスへとしまった。
「目の前で見るとほんとにすげえな。しかし、助かるぜ。ナウテットの街のギルドには話を通してある。向こうに着けば、すぐに水の受け渡しになるように手はずは整えてあるからな」
ギルドマスターは俺が樽をアイテムボックスにしまう姿を見ながら、向こうへの引き継ぎが済んでいることを伝えてくれる。
「了解です。それでは行ってきます」
「ああ、頼んだぞ!」
受け取りを終えた俺はギルドを辞去し、月の雫亭へ。
出立準備を整えるという名目で泊まっていた客室へ戻り、ベッドの上に宿泊料金と、お礼の手紙を忍ばせる。
その後、階下に下り、フローラさんとテリーさんにご挨拶。
「それじゃあ、準備が整ったのでナウテットの街へ向かいます。長い間お世話になりました」
『お世話になりました』
俺とミミはペコリとお辞儀。
「お世話になったのは私の方です。まるもっちーさんとミミちゃんが来てから色んなことが起きて……。強くなったし、歌も歌えるようになった……。感謝してもしきれないくらいです!」
「俺からも礼を言わせてくれ。姉貴が世話になった、ありがとうよ」
「いえ、全部フローラさんが頑張ったからですよ」
俺が何かのきっかけになったかもしれないが、最終的に決断して行動したのは彼女自身だ。
色々な事を成し遂げられたのは、フローラさんが自分の力で一杯頑張ったからなんだよね。
そんな俺の言葉を聞き、フローラさんが何か言いたげな表情で、こちらを見つめてくる。
だけど、言葉が見つからないのか、話し出そうとはしない。
まあ、これ以上話し込んでも別れ際が分からなくなるし、出発するか。
「それじゃあ、失礼します」
『ばいばい!』
俺とミミは二人に向けて、手を振った。
「お気をつけて!」
「この街に来ることがあれば、また泊まってくれよな」
手を振り返してくれるフローラさんとテリーさんに見送られ、月の雫亭を後にする。
次に目指すはオアシスにあるというナウテットの街。
水が不足しているらしいし、急いで向かおう。
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