412 試験終了。まさかの事態に!?
気合の入った掛け声と共にシンプルながらも速度が乗った突きを繰り出してきた。
俺はひらりと初撃をかわす。
今くらいの攻撃であれば、ずっとかわし続けることは可能だ。
が、ここは俺の実力を見せ付ける場ではない、フローラさんの実力を見定める場だ。
となると、力加減を設定し、その状態を維持し続けるのがいいな。
たしか銅級の討伐依頼でメジャーなのはジャイアントラクーン。
あれを単独で倒せるくらいの強さの冒険者なら攻撃が当たるくらいを想定して動くか……。
その後、フローラさんの攻撃を三回ほどかわして、加減を調整。
後は、同じ力加減をキープして攻撃をかわし続けるだけだ。
実力を抑えて、同じ程度をキープしながら動くっていうのも中々難しいな。
「くっ」
何度目かの攻撃をかわされたフローラさんは素早く立ち止まり、ターン。
「これで!」
俺の背面に向けて袈裟斬りを仕掛けてきた。
「はっ!」
俺は振り下ろされた剣の腹に触れつつ、フローラさんの体を捌く。
フローラさんは勢いを殺せず、たたらを踏み、危うく転倒しそうになった。
なんとか体を起こして踏みとどまるも、息が上がっている。
「ハァ……ハァ……」
肩で息をし出し、攻撃の手が止まるようになってきた。
試験が始まってしばらく経ったし、スタミナが切れてきたのだろう。
こうなっては攻撃の速度と威力が落ちるし、風船を割ることは難しくなる。
しかし、制限時間はまだ十分にある。
フローラさんが諦めない限り、チャンスは消えていない。
ここは集中して、しっかり力加減を間違えないようにしよう。
「やあっ!」
フローラさんは苦し紛れなのか、こちらへ前転しながら煙幕玉を俺に向かって投げつけた。
一応、風船を狙っているようだが、あまりに見え見えの投擲だ。
いや、もしかしたら、かわされて地面に接触するのを狙っているのかも……。
煙幕玉は地面などに強くぶつけて煙幕を出す道具だ。
俺に投げるように見せかけつつ煙幕を発生させ、その隙に攻撃するつもりか!
「よっ」
俺はそうはさせまいと、煙幕玉をキャッチ。
攻撃していないし、ルールの範囲内だよね。
悪いけど、しっかりと対応させてもらおう。
が、俺が煙幕玉をキャッチした瞬間、フローラさんが「ガッ!」と短く叫んだ。
途端、煙幕玉が破裂。周囲が白い煙で包まれる。
「魔法か!?」
声に魔力を乗せることで、衝撃を起こしたんだ。
相手に傷を負わせるほどの威力はないが、煙幕玉を破壊する事はできるってわけか……。
やられたな。
周囲が真っ白になり、俺が焦った瞬間を狙ってフローラさんが正面から飛び込んで来る。
一気に接近し、連続で突きを放ってきた。完全な奇襲攻撃だ。
俺は突きを手で捌きつつ、態勢を立て直そうとする。
木剣に集中し、相手の攻撃を凌ごうとした。
――だが、それが間違いだった。
フローラさんは俺と限界まで接近したタイミングで、再度「ガッ!」と叫んだ。
途端、煙幕が局所的に散る。
それと同時に俺の体に付けていた風船が三つ弾けた。
「そこまで! 試験終了!」
すかさずギルドマスターが叫び、試験の終了が告げられる。
くぅ……、完全にしてやられた。これはちょっと悔しいぞ。
俺がそんな事を考えている間に、ギルドマスターがフローラさんに近づく。
「見事だ、文句のつけようがない。試験は合格。お前を銅級冒険者と認める」
「あ、ありがとうございます!」
ギルドマスターの言葉を受け、深く頭を下げるフローラさん。
「おめでとうございます。やりましたね」
「はい! お手合わせ、ありがとうございました」
合格はめでたい。
ここはきっちり祝福しておかないとね。
「お前、どういうつもりだ。ある程度手加減しろって言っただろうが」
フローラさんと合格を喜び合っていると、ギルドマスターがご立腹した様子で俺につめ寄って来る。
「え? ちゃんと調整しましたよ」
ただの手抜きにならないよう、かなり慎重に加減したけど。
「そんなわけあるか。あれだけ動けていたら、風船を割れなくても合格にしたいくらいだったぞ」
「銅級の討伐でメジャーな、ジャイアントラクーンを単独で倒せるくらいを想定して動いたんですけど」
と、力加減の目安にした設定を打ち明ける。
「確かにジャイアントラクーンは銅級でメジャーだ。だが、それはパーティーで倒す個体だぞ。単独で楽に倒せるのは、ワンランクかツーランク上の冒険者だ!」
「ええ……。それはやってしまいました……。すみません」
完全にやらかしてしまっていた。
俺の設定ミスだ。フローラさん、よく合格してくれたな……。
以前、彼女が語ったとおり、相当の実力をつけたようだ。
「ったく。頼むぜ、おい……。まあ、フローラちゃんが強かったから、問題なかったけどな」
実力が足りているのに、危うく不合格にしてしまう所だった。
次回、同じようなことがある時は、もっと打ち合わせをしっかりとしようと心に誓う。
フローラさんが強くなっていて本当に良かった……。
これにて試験は無事(?)終了。
フローラさんは晴れて銅級冒険者となった。
以前、俺が金級に合格した際はお祝いをしてもらったし、今日は盛大に祝い返すとしよう。
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