41 緊急事態発生! 怪我の原因に潜む影!?
「エドモンさん!? 大丈夫ですか!」
全員重傷を負っているように見える。
俺はエドモンさんが背負っていた耳が長い女性を引き受け、横抱きに抱えた。
「おう、まるもっちーじゃねえか。た、助かる。川の近くまで運んでくれ……」
エドモンさんが息も絶え絶えに言う。
「分かりました! お湯がありますけど、使いますか?」
たまたま湯を沸かしていたことを思い出し、尋ねた。
「おお、準備がいいじゃねえか。サラとクリストフも、まるもっちーに礼言っとけよ」
「サラよ。助かったわ、ありがとう」
「クリストフだ。気が利くじゃねえか、小僧」
「まるもっちーです。俺が休んでいたのは、この先です」
移動中、エドモンさんから二人を紹介してもらう。
名前はそれぞれ、エルフのサラさんと、ドワーフのクリストフさん。
エドモンさんたちは固定パーティーを組んでいて、ずっと三人でやってきたそうだ。
「ついでに布もあるんで使ってください。あ〜、薬草は生のままでも使えるんでしょうか?」
三人とも傷だらけだし、こんな状態では布はいくらあっても足りないはず。
アイテムボックスにミミが作ったベンダーラ草があることを思い出し、生でも使えるか聞いてみる。火を通したりしないと、使えないものなのかな。
「布は借りる。薬草はお前の依頼のやつだろうが。そういうのは取っとけ。大丈夫、薬はあるし、サラは魔法が使える。心配すんな」
薬草はいらないと断られてしまう。
その理由もエドモンさんらしかった。
「休んで魔力を回復させれば、魔法が使えるわ。これくらいなら平気だから」
「分かりました。何かできることあったら、言ってくださいね」
話を聞く限り、サラさんが回復魔法の類いを使える様子。
これなら一刻を争う状態でもない限り、大丈夫そうではある。
「とろそうな見た目なのに、気が利く小僧じゃねえか、ガハハ!」
クリストフさんに背をはたかれ、むせてしまう。なんとも豪快な人だ。
そうこうしている内に、俺が休憩していた場所に到着する。
サラさんは足を痛めていたが、意外に軽傷。
ただ、魔法の使いすぎで極限まで精神が疲労していた。
終始大声で騒いでいたクリストフさんは、骨が折れまくっていた。
この人、なんで元気なんだ……?
明らかに重症のはずなのに、そんな気配を感じさせない。凄まじい胆力の持ち主だ。
エドモンさんも、クリストフさんほどではないが、骨が折れていた。
大惨事である。
しかし、三人はそんな傷をものともせず、慣れた手つきで応急処置をしていく。
三人の阿吽の呼吸と以心伝心ぶりを前に、俺が手伝えることなど何もなく、ひたすらソワソワしながら見守ることしか出来なかった。
全員の処置が終わり、エドモンさんが俺に声をかけてくれる。
「おう、心配かけたな。俺も含めて全員の応急処置は済んだ。これでひと安心だ。後はサラの魔力の回復を待って、回復魔法をかけてもらえば問題なしだ」
「良かったです。討伐依頼で負傷したんですか?」
エドモンさんの話しぶりだと、後遺症が残ることもなさそうだ。
回復の見込みも立ったし、これでひと安心。
しかし、全員がこれだけ負傷するなんて、何があったのだろうか。
「馬鹿言え! わしらがそんなヘマするか! 痛ててッ」
「クリストフ、肋骨折ってるのに叫ぶからだぞ。討伐依頼はうまくいったんだ。だが、その帰りにアックスブルの大群に鉢合わせしちまってな……」
「アックスブル?」
「斧のような角を生やした大牛よ。凄く交戦的な性格で、生き物を見たら突進してくるの」
「少数なら、なんとかなったかもしれんが、数が多過ぎた……。逃げるだけで、この様だ……」
エドモンさんが苦々しい顔で呟く。
牛の大群に追い掛け回されるなんて、聞いているだけで縮み上がってしまう。
あれだけ負傷して、よく逃げ切れたものだ。
「そうだったんですか。良かったらこれでも食べて、ひと息ついてください。こういう時は甘い物を食べると、落ち着きますよ」
俺はそう言いながら、餅スキルで作り出した三色団子を差し出す。
当然、癒やし効果スキルをたっぷりと振りかけておいた。精神面への効果は確認済みなので、サラさんの回復に役立ちそうだと思ったのだ。




