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409 まさかのお願いに、ギルドマスターがドン引き!?

 

「そいつ、正気か!?」



 ギルドマスターが驚愕の表情で目を見開く。


 そこまで大げさなリアクションをしなくても……。


「で、引き受けてもいいでしょうか?」


「ダメに決まってるだろうが! 相手が死ぬ!」


 ギルドマスターが高速で首を横に振る。


 その顔は恐怖で引きつっていた。


 まるで俺が新人イビリを画策し、残酷ショーでも開催するかのような反応である。


 心外すぎるぞ……。


「なんでもこの街には金級冒険者がいないから、是非引き受けてほしいという話だったんですけど」


 と、事情を説明する。


「確かにそれはそうだ……。この街では、昇級試験のために他の街に行くのは、よくあることだからな……」


「ハンデをつけてやれば問題ないのでは?」


 もともと鉄級試験の模擬戦は、受験者の実力を見るためのものだ。


 ガチンコで勝負して、勝ち負けを競うものじゃない。


 適当に制限を付けて、相手が大怪我しないように配慮すればなんとかなりそうだけど。


「いやいや、元からハンデをつけてやる模擬戦なんだよ。対戦相手となる金級冒険者には手足に重りをつけてもらうんだ」


 なるほど、そういうルールだったのか……。


「それなら、重りを十倍くらいつけたらどうでしょう?」


 それでかなりのハンデになるはず。


「他の奴が十倍とか言ったら正気を疑うが、お前の場合はそれでも少ない気がするんだよな……」


 そう言われるとそんな気もする。


 ヘルセンチビートルをジャイアントスイングできちゃうしな……。


 そんな奴が十倍程度の重りでは少ないか。


「百倍?」


 もっと重い方がいいかな?


「どんな重りだよ!? 全身グルグル巻きにしても足りないだろうが……」


「それもそうか……」


 全身に重りを巻いた姿を想像し、身動きが取れないことに気付く。


「そもそも、別の街で試験を受けたらいいじゃないか。そこまでしてお前と模擬戦をする意味なんてないだろ」


「それが、対戦希望の受験者とは、しばらくパーティーを組んでいたんですよ。それで、成長した自分を見て欲しいと、言われまして」


「なるほどなぁ。でもその場合だと、希望者がお前以外で却下するぞ」


「え、どうしてですか?」


「気心が知れているからだよ。手加減する可能性があるだろうが」


 言われてみれば、その通りだ。


 試験なんだから、不正が発生しにくいように配慮されるよな。


「ああ〜……。八百長するってことか……。そこに関しては心配無用です。俺はそんな繊細なイカサマなんてできませんから」


 わざと負けるようなことをしたら、ワザとらしくてバレバレになる自信がある。


 きっと顔にも出てしまうはず。


「でもなぁ……」


 ギルドマスターは腕組みをし、難色を示す。


 うーん、フローラさんから真剣にお願いされたし、もう少しだけ粘ってみるか。


「そこはほら、俺もこの街に来て色々手伝ったし、いいよってことになりませんか?」


 ギルドマスターに協力したことをちらつかせ、OKを引き出そうとする。


 これで、ダメだったら、フローラさんには諦めてもらおう。


「そこを突かれると弱いな。お前には世話になったしなぁ……。よくよく考えたら、お前が相手をするんだから、手心を加えて丁度いいくらいかもしれん。よし! やるか!」


 ギルドマスターはしばらく考え込んだ後、試験することを許可してくれた。


 イカサマをする前提で了承してくれたのは引っかかるけど……。


「ありがとうございます!」


 ちょっと複雑な気分だけど、お礼を言っておく。


 一応試験できるんだから、良しとするか。


「だが、今回だけだぞ。お前が冒険者と戦うのは模擬戦であっても容認しがたい。お前も相手が知り合いなら、殺さないように細心の注意を払うだろうからな」


「どれだけ信用が無いんですか……」


「信用の話じゃない。腕力の話だ」


 と、ギルドマスターに真顔で言い切られてしまった。


「それと……、お前専用の特別ルールにするぞ。普通の模擬戦にしたら相手が死ぬからな」


「またそんな事言って。大丈夫だって言ってるのに……」


 なぜ、そこまで慎重なんだ。


 俺が相手をうっかり殺すと思われているのが、どうにも引っかかる。


 でもまあ、これでフローラさんには良い報告ができそうだ。


 …………


 翌日。


 俺は事情を説明したフローラさんと共に、ギルドへと向かった。





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