397 ステファニーは一部始終を目撃する 3
「え、何……、あれ?」
リンダさんが呆然とした表情で、とある一角を指差した。
そこには黒い島のようなものが見えた。
あれは、まるもっちーが吹き飛ばされているときにも見えたものだ。
遠眼鏡で確認した時はかなり遠くに見えたはずなのに、今はオーロラの側まで近づいている。
私は歌いながら黒い島を凝視する。
島だと思っていたものが少しずつ浮上し、その姿があらわになる。
それは巨大な黒いタコのように見えた。
海面から頭を半分ほど出し、その周囲には搭が生えたかのように何本もの足が姿を現す。
なんて巨大なの……。
あんな大きなモンスター見たことがない。
巨大なタコは、その大きさからは想像も出来ない素早さでオーロラに体当たりをした。
途端、オーロラにヒビが入り、砕け散ってしまう。
「かき消された!?」
「やべえぞ! モンスターが動き出した!」
驚くスタッフの声に釣られて、オーロラがあった場所に視線を向ける。
すると、オーロラで押さえ込んでいたモンスターの群れが、街へ移動していく姿が見えた。
もう一度魔法を使うべきか……。
だけど、今同じことをしても、あの巨大なタコがいる限り破壊されてしまう。
考え、迷い、立ち尽くす。
それは私だけでなく、皆同じ状態だった。
思いつく手立てが無い。
かといって、今から逃げ出しても間に合わない。
まさか、あんな大きなモンスターが襲ってくるなんて……。
このまま黙って見ていることしかできないのだろうか。
…………
「大分吹き飛ばされたな……」
俺は海面から顔を出し、現在地を確認。
周囲を見渡すと、後方に街が見えた。まさか、こんなに吹き飛ばされるなんて……。
俺と街の間には大量の水飛沫が見える。
あれは……、さっき逃げ出していたモンスターの群れか……。
「まずいな……」
このままでは街にモンスターが押し寄せてしまう。
さっきのモンスター襲来は沈静化したため、冒険者たちは一旦港に引き上げてしまっている。
今からもう一度海に出ている間に、モンスターの接近を許してしまう。
ここから何かできることはないか……。
俺が考えあぐねていると、歌が聞こえてくる。
「おお!?」
途端、街が光り輝いた。
目を凝らすと、祭り用のステージがある辺りだ。
灯台ではなく、あそこからミミとステファニーさんが歌っているのか?
俺が疑問に思っていると、舞台からオーロラが発生し、海に向かって進んで行く。
オーロラはぐんぐん進み、モンスターの群れに接触。
街から引き離すように、押し返し始めた。
「魔法の威力が増したような……」
オーロラが展開されたのは限定的な範囲だが、その分強力なような気がする。
などと後方に気をとられていたせいで、カオスオクトパスの接近を許してしまう。
何度目か分からない体当たりだ。
「く、またか!?」
腕を前に出し、カオスオクトパスの体当たりを防ごうとする。
しかし、このままではダメだ。
また同じように吹き飛ばされてしまう。
なんとか踏ん張ることが出来ないか……。
いや、防御しようとするから失敗するのだ。
ここは攻撃で対抗するべきだ。
そう考え直した俺は、腕をクロスしたままバタ足を開始。
体当たりをしてくるカオスオクトパス目がけて突進した。
お互いに相手目がけて接近したため、あっという間に接触。
衝突した瞬間に激しい音が鳴り響く。
思い切りぶつかったのが功を奏したのか、今回は吹き飛ばされずに済んだ。
が、相手を吹き飛ばすことも出来なかった。
衝突した状態のままどちらにも進まず、拮抗した状態が構築されたのも束の間、じわじわと押され始める。
「く、押し負ける……」
付け焼刃のバタ足では、巨大なタコの突進を跳ね返すだけの力をこめることができなかった。
結果、軽く跳ね飛ばされてオーロラに接触。ふんわりと着水する。
慌てて泳いで、海面から顔を出す。
すると俺を追ってカオスオクトパスがオーロラに激突。
魔法のオーロラはカオスオクトパスの衝突を受けて、粉々に砕け散ってしまった。
それがスタートの合図のようになり、押しとどめられていたモンスターたちが一斉に街へ向かって進み出す。
必死にカオスオクトパスから逃げようとしているせいか、移動速度が速い。
「壊れた!? まずい……、これ以上は……!」
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