395 ステファニーは一部始終を目撃する
きっと、カオスオクトパスの接近に怯えて逃げているのだろう。
このまま群れを街に行かせるわけにはいかない。
俺は街の方へ逃げるモンスターを倒そうと魔力を練る。
が、そこへ再度カオスオクトパスが体当たりをしようと接近してきた。
カオスオクトパスかモンスターの群れ、どちらを優先的に対応すればいいか迷いが生じる。
結果、何も出来ないままに数秒が経過してしまう。
「もちもち波!」
迷った末、初めにターゲットに選んだモンスターの群れ目がけて無属性魔法を発動。
しかし、発射途中でカオスオクトパスが俺に接触。
魔法はあらぬ方向に逸れ、俺自身はまたもや吹っ飛ばされることとなってしまった。
…………
私、ステファニーは、その一部始終を目撃していた。
それはわずかな時間の間に起きた出来事だった。
まるもっちーが灯台から飛び出し、海へ向かって飛んだ。
浜辺に着くとボートに乗って海へ繰り出す。
そしてオーロラ付近に到着すると、近くにいた漁船を放り投げたのだ。
その後、次々と漁船を放り投げ、最後はモンスターの群れを魔法で吹き飛ばして見せた。
ここから飛び出すところを見ていなければ、誰がやったか分からないほど意味不明な出来事。
目を疑う光景であったが、幻ではなかった。
慌てて窓から身を乗り出していなければ、見逃していた光景。
そんな数秒の出来事で事態は一変し、街の危険は去ったかのように思えた。
だが油断は出来ない。
またモンスターの群れが現れるかもしれない……。
私は展開した魔法がいつ切れても問題ないように、窓から海の様子を窺い続けた。
すると、まるもっちーが乗ったと思わしきボートが、凄まじい速度で海へ出て行くのが見えた。
その後、しばらくはおだやかな時間が続き、もう大丈夫かもしれないと安心した瞬間、新たな変化が起きてしまった。
「え、何?」
私は思わず声を上げてしまう。
遠方の海面に巨大な水柱がいくつも上がったのだ。
事態を把握しようと遠眼鏡を覗くと、まるもっちーが吹き飛ばされたせいだと分かる。
どうやら彼はモンスターを倒した後も何かしていたようだ。
まるもっちーは水面を跳ねる石のように吹き飛ばされていた。
海面に接触するたびに大きな水柱が上がることから、凄まじい勢いなのが窺える。
一体何が起きたの……。
まるもっちーが飛ばされて出来た水柱を目印に、点線を辿るようにして目で追う。
点線の終点には、黒い何かがあった。
黒い島?
巨大な何かは、その大きさに見合わない速度でまるもっちーに迫っていた。
黒いものの正体が掴めず戸惑っていると、更に異変が起きる。
一部の海面が真っ白になったのだ。あれはきっとモンスターの群れに違いない。
魔法を展開した時と同じ状態に見えたから、そう思えた。
黒い巨大な何かと、モンスターの群れが街の方へ向かっている。
展開したオーロラに視線を移せば、効果が薄れてきていることが分かった。
最早、あれだけの量のモンスターの侵入を防ぐだけの力は残っていない。
そもそも、モンスターが嫌がる気配を出す魔法なのだ。
障壁を張れたのは二人同時に魔法を発動し、魔道具の力で増幅したため。
その効果を維持できるのは、わずかな時間だけだ。
いまだにモンスター避けとしての効果は維持されているが、あんな興奮状態のモンスターを近づけさせないようにするのは無理だろう。
――今、海上には冒険者がいない。
皆、一旦港に戻ってしまっているためだ。
今から船を出しても、街の側で応戦する事になる。
そうなると間違いなく討ちもらしが出てしまう。
「大変! このままだと危ない!」
あの中に陸上で活動できるタイプのモンスターがいれば、街に侵入してくる恐れがある。
もう一度ミミちゃんと二人で魔法を発動するか……。
しかし、それで稼げる時間はわずか。
灯台に取り付けられた歌唱台は光属性魔法を増幅してくれる。
だけど、効果範囲が街全体に固定されている。
そのため、広範囲をカバーする分、威力が薄くなってしまう。
一点に集中した時より、どうしても威力が落ちてしまうのだ。
街にモンスターを近づけさせないために設計されたものなので、本来ならそれで問題ない仕様だ。
だけど今は、モンスターが居ない場所にまで魔法を無駄に使ってしまっていることになる。
もし、攻められている箇所に一点集中して魔法をかけることができれば、もっと高い効果が期待できるのに……。
そこまで考えて、私はあることを思い出した。
「そうだ! ステージで歌えば……!」
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