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386 まさかの乱入者現る!?

 

 そう考え、道を進んで行くとフローラさんが立っているのが見えた。



「テリーさんも心配して言ってるんだと思いますよ」


 ちょっと言葉がきつい部分もあるが、それは家族だから仕方ないかもしれない。


 テリーさんが強めに言うときは、決まってフローラさんのことを心配している時だ。


「分かっているんです。テリーが言っていることが、正しい部分もあると分かっているから。心配してくれてると分かってるから、言い返したくない」


 フローラさんは海を見つめながら言った。


「私、あの灯台でずっと歌を歌っていたんです。毎日毎日。歌うのが大好きだったんです」


 薄々そうではないかと思っていたが、実際に話を聞くのは初めてだ。


「だけど、無理をしすぎて喉を痛めてしまって。治療して治ったんですけど、思うように声が出せなくなって……」


 だから声をうまく出せず、歌うことが出来なかったのか。


「完全に治ったから、本当は歌も歌えるはずなんです。だけど、うまくしゃべることすらできなくて……」


「そうだったんですね」


 出来るはずなのに出来ない。


 治ったはずなのに、うまくいかない。


 フローラさんにとっては辛い日々だったんだろうな。


 でも、そういえば……。


「でも、この間は歌えたじゃないですか?」


 俺はフローラさんが楽しく歌っているところを見た。


 本人も驚いていたが、歌えていたのは紛れも無い事実だ。


「お酒を飲んだ時ですね」


 俺の言葉にフローラさんが頷く。


「はい。実は、あれから誰にも見つからないように森で練習していたんですけど、一度も上手くいっていないです……」


「俺が慣れるしかないなんて言ったから……」


 俺が余計な事を言ったせいで、フローラさんに不要な心労を増やしてしまった。


 軽率だったな……。


「違います! 歌はずっと歌いたかったんです!」


「なら、もっともっと練習しましょう!」


 フローラさんが声を上げた瞬間、間髪をいれずに誰かが叫んだ。


 皆の視線が一斉に声が聞こえた方へ向く。


 そこにはステファニーさんが立っていた。


 ステファニーさんはフローラさんに駆け寄ると両手を取った。


「先輩! 練習あるのみです! 一緒にやりましょう!」


「ステファニーちゃん……、なんで」


 フローラさんは現れた闖入者に困惑の様子だ。


「祭りのステージが完成したんです。リハーサルが始まったので、ダメ元で先輩を誘おうと思って来たら、話を聞いちゃいました」


 宿へ行く途中、砂浜にいる俺たちに気づいたって事か。


 …………


「先輩、歌うのが嫌いになったわけじゃないんですね」


 どこかほっとしたような表情で、ステファニーさんが呟く。


「今でも大好きだよ」


 薄く微笑んだフローラさんは、きっぱりと言いきった。


「なら私も手伝います。一緒に練習しましょう」


「でも……、いつ歌えるようになるか分からないし……。その間ずっと迷惑をかけることになるから……」


「迷惑なんかじゃないです! それより、ずっと先輩と会えなかったから、私寂しくて」


「ステファニーちゃん……」


「それとも、私が一緒に練習するのは迷惑ですか」


 フローラさんの乗り気じゃない返事に、ステファニーさんが眉根を寄せる。


「そんなことないよ」


 フローラさんが首を振って否定する。


 よく可愛い後輩が居ると楽しそうに話していたし、本心だろう。


「なら、やりましょう。歌えるようになるまで、お手伝いさせてください。私、先輩に魔法を教えてもらった時、なかなか上手くできなくて。それでも先輩がずっと一緒に練習を付き合ってくれたから出来るようになったんです! 今度は私が先輩のお手伝いができるかもしれないと思うと、すごく嬉しいんです。いくら時間がかかっても構わない。私がずっと支えますから!」


 ステファニーさんは自分の思いを伝えようと、必死に言葉を紡いでいた。


 そんなステファニーさんの懸命な様子を見て、フローラさんは目を閉じてしばらく考え込む。


 数秒の後、目を開いたフローラさんの表情は、凛としたものに変わっていた


 ステファニーさんの想いに応えるかのように、その瞳からは熱い決意が窺えた。


「分かった、やるよ。よろしくね」


「はい」


 二人はどちらからというわけでもなく、自然と手を取り合い、強く頷き合った。





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