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353 旅立ち

 

 俺が説明し、ミミが一歩前に出て歌い出す。



 すると、歌声が届いた瞬間、暖かい風が吹き抜けたかのような錯覚を覚えた。


「とでも穏やかな気持ちになるな」


「ああ、全身が温かくなっていく」


「これで、旅立てる」


「ありがとう、君達のお陰だ」


 浄化魔法を受けた皆は、笑顔のまま光の粒子となって次々と消えていく。


「ありがとう、出会えたのが君達でよかった。本当に助かったよ」


 最後に光に包まれたドミニクさんが言った。


「俺たちの方こそ感謝です。危険を知らせに来てくれて、ありがとうございました」


「本当は倒してしまいたかったんだけどね。船上で乗客を守りながら戦うと、そうもいかなかった。次第に街の方へ近づいていたし、肝を冷やしたよ」


 そういえば、あのヤドカリは全身傷痕だらけな上に、片方のハサミがなかった。


 あれはドミニクさんがやったのか。


「ドミニクさんがあのモンスターを弱らせてくれていたお陰で、街へ向かう速度も落ちたし、倒すこともできました」


 あのモンスターはかなり弱っていた。


 あの巨大なモンスターを一人で相手にし、乗客を守りながら船上での戦闘。


 ドミニクさんの実力は相当なものだろう。


「そうだと嬉しいよ。それじゃあ、お別れだ。皆、元気で」


 そう言ったドミニクさんは、笑顔のまま光の粒子となって消えていった。


 …………


「皆、行ってしまいましたね」


 一度に沢山の人がいなくなったせいか、妙に静けさを感じてしまう。


 そのせいで、普段は気にならない風や波の音が耳に残った。


「ええ、これで安らかに眠れるかと」


 フローラさん静かに目を閉じ、乗客たちがいた場所へ黙とうを捧げていた。


 俺もそれに倣い、黙とうを捧げる。


「ところでまるもっちーさん」


 目を開けたフローラさんがこちらを向く。


「なんですか?」


「あれはどうするんですか?」


 そう言ってフローラさんが指差したのは、俺が作った豪華客船だった。


 無人となった豪華客船は、穏やかな海上で強烈な存在感を放っていた。


「あ、忘れてた……。とりあえず、しまっておきます」


 咄嗟に作ってしまったが、もう使うことはないかもしれない。


 まあ、役に立ったし、いいか。


 …………


 翌朝。


「さて、色々ありましたけど、今日は海底洞窟に行きます」


 ずいぶんと予定が狂ってしまったが、本来の目的にとりかかる。


 今日こそ、洞窟の分かれ道の片方を踏破したい。


 それで、ソーンシェルフィッシュが見つかればいいんだけど。


『はーい!』


「もう誰かに家に残ってもらう必要もないし、フローラさんも一緒に行きましょう」


「はい! お供します!」


 二人の返事を聞いた俺は、早速ボートを取り出し、海に向かう準備を整えていく。


 ヤドカリ戦で船が壊れてしまったが、予備はまだ三つあるので問題ない。


 予備のボートに乗り込んだ俺たちは、海底洞窟があるポイントへ向かった。


 現地に到着し、潜行。洞窟に入ると、行っていなかった分かれ道の方へ進む。


 一本道のため、迷うことはない。道は斜め上に伸びているようだった。


 モンスターを見落とさないよう、注意深く前進を続ける。


「雰囲気が違うな」


 妙に明るく、水温も高い気がする。


 上を見上げれば光る海草がびっしりと生えており、海上に出たかのような錯覚を覚えるほどの明るさになっていた。


 なんとも幻想的な景色だ。


「水温が上がっている、みたいですね。魚の種類も、変わっている」


『綺麗なお魚だね!』


 色とりどりの魚の群れが行き交い、目を奪われる。


 そんな明るい地帯を進んでいると、また暗くなっていく。


 本来の洞窟の姿へと戻っていくかのようだ。


 しばらく進むと、突き当たりに到着する。


 そこはホールのように広い場所となっていた。


 俺たちは分散し、隅々までソーンシェルフィッシュを探すも、何も見つからない。


 どうやらここも空振りのようだ。


「残念、ダメだったか……」


 そう簡単に見つかるはずもないか。


 戻ったら新しい洞窟を探さないといけないな。


 俺が気持ちを切り替えようとしていると、ミミが何かに気づいて声を上げた。


『何かいるみたいだよ?』




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